斬新な切り口のオペラ評論集
★★★☆☆
私は、同著者による『オペラに連れてって!』という本に対して、このコーナーでかなり批判的なレビューを掲載させていただきました。その後、こちらの編著作を読んで、この著者(とその仲間たち)の基本的主張が以前よりは理解できたような気がしました。演出に焦点を当てたオペラ映画の批評や、あまり知られていないドイツ作品の紹介など、他の類書にはみられない新鮮な内容で、考えさせられる点の多い、なかなか通好みな本と言えましょう。それでもやはり、この著者たちの、しばしば自信過剰とも思える主張の強さや、人を食ったような文体、俗っぽい装丁や挿絵などに関しては、いかにも受けを狙っていることが見えすいているようで、あまり好感は持てません。まあこれは、多少なりとも彼らと同じように教育や研究に関わる立場の人間としての、基本的人生観の相違からくる、ある種のひがみであると言われてもしかたのないことかもしれませんが…。