語りコトバが生きている
★★★★☆
全三巻に簡潔にまとめられた水滸伝シリーズ。ずっと読んでみたいと思っていた本ですが、大長編のうえ、いろいろと版があるようでどれを選んで良いのかわからなかったのです。岩波少年文庫なら子供の読者をも意識してつくられるので、入門としてはいいのではと思って買ってみました。
これは正解!口伝がもとになっているらしい水滸伝の、その良さが訳の文章に生きています。いまにも講談の活きの良い語り口が聞こえてきそうな文体は、実際に声に出して朗読するにもおすすめ。気持ちよいリズムを堪能できます。登場人物も目の前にいるように躍動し、最後まで楽しめます。正義をうたっているわりに、とんでもない策を弄して仲間を無理矢理引き入れたりするずるさもあり、「おいおい!」とおもわずツッコミたくなる場面もありますが、これがつくられた時代の中国のおおらかさと割り切って読んだほうがいいようです。