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三つの小さな王国 (白水uブックス―海外小説の誘惑)

価格: ¥1,029
カテゴリ: 新書
ブランド: 白水社
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【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:スティーヴン・ミルハウザー/〔著〕 柴田元幸/訳 出版社名:白水社 シリーズ名:白水Uブックス 137 海外小説の誘惑 発行年月:2001年07月 関連キーワード:ミツツ ノ チイサナ オウコク ハクスイ ユー ブツクス 137 カイガイ シヨウセツ ノ ユウワク みつつ の ちいさな おうこく はくすい ゆー ぶつくす 137 かいがい しようせつ の ゆうわく、 ハクスイシヤ 6911 はくすいしや 6911、 ハクスイシヤ 6911 はくすいしや 6911 細部に異常なこだわりを見せる漫画家、中世の城に展開する王と王妃の悲劇的な確執、20世紀初頭のアメリカの呪われた画家の運命。俗世を離れてさまよう魂の美しくも戦慄的な高揚を描く珠玉の中篇小説集。
王国が育つ物語 ★★★☆☆
三つの中篇小説から成っている。中世ヨーロッパを思わせる城の中で繰り広げられる「王妃、小人、土牢」は奇怪なロマンス。そびえる塔には王妃、地中深くには土牢、往還するのは小人。城の高みから地底の闇までを、思いが上下する。48の章すべてに表題が冠せられており、さながら城を構成している岩塊である。話が刻み込まれた岩は積み上げられ、ゆっくりと物語が育ってゆく。そして城の地下深き土牢からは、岩塊を避けながら抜け道が掘られ続けている。

「展覧会のカタログ―エドマンド・ムーラッシュの芸術」で展開するのは、19世紀前半のアメリカの画家が生涯の時どきに描いた、26枚の絵画である。さまよう日々の思いの結節となるべく描いたものの、それが明るい道へ導くことはなかった。塗り込められた情念は硬く重い岩のように道をふさぎ、ついには画家を戻ることのできない闇へと誘い込んでしまう。絵画は画家を物語に閉じ込めてしまったのであった。

劈頭に置かれた一篇は、1920年代にニューヨークの新聞漫画家が、昔風の描き方でアニメーション漫画を制作する「J・フランクリン・ペインの小さな王国」である。抑揚がない同質の文の洪水で、ひたすら文が押し寄せてくる。アニメーションを構成する膨大な数のドローイング、それを文に置き換えているのかもしれない。郊外の古い自宅の書斎は塔の中だ。下方に苦難が生息していても、思いは窓から高きへと飛翔する。塔にこもればよいのだ。パラパラ漫画と同様に、パラパラ文が動き出す。一つの文は一枚のドローイングに相当し、文章がアニメーションを模倣しているのだ。全5場のアニメーションの始まりである。

三つの小説が並ぶと効果は抜群。瑣末なものに生命が刻印され、物語として動き始める。小さなかけらを並べたり積み上げたりすると王国が形を表すのだ。
幻想の距離 ★★★★☆
現実と幻想の中間色は愛だ。
幻想へ導かれる3つの世界。人は幻想を憧れ、悔い、恐れ、追い求める。
その終着点を見るものは、単なる評価を下せばいいのだろうか。

僕と、幻想の距離は表裏一体で、
あらゆる感情、(多分〜かつ〜と称されるもの)が行き来する世界は
混乱を呈しながらもひとつの目的へ向かっている。

ミルハウザーは、どうしてそのベクトルを描けるのだろうか、と僕はいつも思ってしまう。
★★★★★
 当然柴田元幸が訳しているから読んだのだけれど、すごすぎるじゃないかミルハウザー。
 最初の話はアニメーション職人の話。一枚一枚書いてがんばってるんだけれど、そこに加わる幻想性と熱がたまらない。特にラストシーンは美しすぎてしゃれにならない。幻想小説といったら二番目の話。王妃、小人、王、辺境伯の四角関係を書いたものだが、中世っぽい物語と、作者の物語観が語られることといい、まさに幻想小説!という一品。もちろん最後の三番目の話も、ラストのわけのわからんカタルシスがたまらない。
 ハリポタとか読んでいる人に是非読んでほしいですよ。これが本場の幻想小説なんだよ、と強く言いたい。
様々な想いがきっとこの本には込められており ★★★★★
 コーエン兄弟の映画作品にみられる「詳細に語ることによってより虚構性を感じさせる描写」と類似したものを、僕はミルハウザー作品に感じることがあります。

 冒頭の『J・フランクリン・ペインの小さな王国』は、多くのミルハウザー作品のモチーフとなっている「創造への純粋な欲求」を主軸に、手描きアニメーション作家が緻密な作品を作り上げていく様子が1920年代のニューヨークを舞台に人との出会いを交えて語られ、物語の進行は保守的といえるものだけれど、その筆致は現代的でシャープな語り口によるものです。やはりこの1本目が(ミルハウザー作品を初めて読む方にも)「つかみ」としては的確な配置。他の二作品の独特な文章形式との対比にも関わらず、そこには続いた一つの世界が見えてきます〡?

 柴田元幸訳ということでこの本を読んでみたという方が多いと思う(僕もその一人)けれど、『三つの小さな王国』という邦題にさえ職人的な技術が感じられる。作品を読んでほしいという翻訳者の想いが感じられる。

想像を巡らす楽しさと ★★★★☆
全く舞台を異にしながらも、奇妙な四角関係を描いているという点、一つの物語の中で異なる二つの物語が交錯するという点では共通な三つの短篇が収められた本です。『J・フランクリン・ペインの小さな王国』は小説形式ですが、『王妃・小人・土牢』『展覧会のカタログ ― エドマンド・ムーラッシュ(1810-46)の芸術』は、連続した文章という形をとらず、エピソードを時系列に並べただけという構成です。ミルハウザーは、幕間を多く取ることによって、読者に想像をめぐらす時間を与えたかったのでしょう。作家の期待にこたえるべく、努力しないと真実が見えてこない作品だと思います。