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鼻 (角川ホラー文庫)

価格: ¥637
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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非常に上手 ★★★★★
とても器用で、上手な作家。
文章はこなれていて無駄もなく、まとめ方の巧さは新人作家の域を越えている。
また引き出しも多そうで、今後もまったく違った切り口から、次々と物語を書いてきそうだ。
文体の切り替えも、必要に応じて自由自在。 読みながら、器用だな〜という感嘆を素直に抱かせる。
要するに、小説のテクニカルな部分に関しては、この人はすでに一流作家の域に達している。今後いち押しの作家さんであることは間違いない。

逆に言うと、この人は小説を書くことで一体何を伝えたいんだろうな…? という疑問がちょっと湧いた。要するに、器用すぎて、この人の小説テーマというものが今いち見えてこなかった。本作でいえば、3作の短編にバラエティがありすぎて、そのどれもが非常にシニカルにまとめられているので、曽根圭介の核というか、小説家としてのメッセージが見えてこなかった。
この点は今後次第というところか。

作品に関して言うと、やはり『鼻』が断トツ。
叙述ミステリというと道夫秀介の『向日葵の咲かない夏』を思い出すが、読みやすさと鮮やかさではこちらの方がはるかに上。 文章もきれいだし、メリハリもある。「ヒビノさん」や「死んだ前妻」が現実世界では何にあたるのか、守銭奴の老婆が主人公の脳内世界では何にあたるのか、といったあたりがやや未回収だが、そんな細部をすっとばすのも新人の才気の現れと思われ、不満はさほど感じなかった。

『暴落』と『受難』は、それと比べるとやや不満。完全な一発アイデアものであり、面白いけど後に残るものが何もない。さらにこの作品どこかで読んだような…という既視感がずっと頭から離れなくて、まいった。筒井康隆という指摘もあったが、個人的には星新一の名前がポーンと浮かんだ。この2作だけだったら、星新一の二番煎じでダメ、と書いていたと思う。

リード作が ★★★☆☆
短編三作中、個人的に[暴落]が一番好きです。
しかしリード作の[鼻]が分かりにくく、ただ単に私が叙述ミステリーを読み慣れていないからかもしれませんが、その点でケチをつけさせていただきます。
豪華おやつみたいな短編集 ★★★★★
いい短編集を読むときの喜びで、一編読むたびじーんとなった。
例えるなら、ポテトチップスのりしおを食べたあと、果物がいっぱい入ったゼリーをつまんで
チョコレートケーキで締める豪華なおやつみたいだった。

3編が3編ともカラーが全く違うのに、それぞれ完成度が極めて高い。
共通するのは、設定の面白さを生かしきる構成の妙と、筒井然とした黒く軽いユーモアのセンス。

【暴落】たのしい仕組み
アイディア一発ではあるけど、“個人⇒法人”の当てはめが組み木細工ばりに上手い。
成人・結婚・昇進等のライフイベント、対人関係を企業に上手いこと例えていて、快感。
ネーミングライツ売買契約のエピソードが秀逸。イン・タムさん…。 
あと『鉄橋を木の棒で支えるのを小学生に見せて、まっとうな大人になるよう仕向ける仕事』に従事するあたりも
なんかかわいくて好き。オチがベタすぎるのが残念。

【受難】詩的
阿部公房からエロスを抜いたみたいな世界観。没コミュニケーション・過酷・メルヘンチックで、短編映画を見るような楽しさ。
ひょこたん以上に、薄汚い紳士が愛らしい。
  
 
【鼻】トリッキー
叙述トリックはそんなに好物でもないけど、“外科医”が自らの世界を構築した理由づけが上手くフォローされててよかった。
私は解説読んでやっと理解し、アハ体験を逃したくちですが…。
不条理小説作家としての今後が楽しみ ★★★★☆
ホラー小説大賞短編賞「鼻」と中篇二編から成る作品。全体として、ホラーと言うよりは不条理小説の趣きがある。

「暴落」は個々の人間に株価が付き、その株価(の変動)によって人が評価される世界を戯画化して描いた作品。現代の経済・エリート偏重主義への風刺だが、実生活でも「例の件で彼は株を上げた」等の言い回しをするので、それをシステム的に徹底させたものとも言える。だが、発想のユニークさに比して、個々のエピソード、全体の仕掛けが凡庸で、せっかくのアイデアが活かし切れていない。もう少し捻りが欲しかった。

「受難」はビルの屋上に閉じ込められた男のまさしく「受難」を描いたもの。男は3人の男女と接触するのだが、"助けて欲しい"と言う男の意思は通じない。個々が隔絶した社会への風刺とも取れる作品だが、登場人物の中では、男を聖騎士と仰ぐ"ひょこたん"の存在が不気味であると共に笑わせる。ストーリーの起伏は少ないものの、不条理感だけで読ませる味のある作品。

「鼻」は鼻の形状で、ブタ人間がテング人間を差別する社会を描いたものだが、"マスク男"を追うゴシック体の一人称の文章が合間に入る。当然、この二つの物語がどうクロスするかが見所だが、見事な出来栄えと言って良い。発想は芥川「鼻」から得たと思われるが、完全にアクロバティックなミステリに昇華されている。

今後が楽しみな作家。奇想に溢れた作品をこれからも期待したい。
個人的には「暴落」、「受難」がおもしろかった ★★★★★
表題作の「鼻」、その他「暴落」、「受難」と3つの短編集でどれもおもしろかったが、個人的には「暴落」、「受難」がおもしろかった。
「暴落」は、自分が付き合っている人や職業、人助けなどの評判が人間の価値を決めるという発想がおもしろく、リアリティもあって楽しめた。最後の終わり方も怖くてよかったと思う。
「受難」は、ビルとビルの間の鉄扉に手錠をかけられて動けない男の話なのだが、通りかかった人間たちがみな自分の世界に入っていて、常識が通じないやりとりが爽快だった。特にスーツを着た紳士がエロ本を置いていく場面は思わず笑ってしまった。