全体は、塾長である大前研一のメッセージと、ケーススタディーとして7人の経営者による講義、専門家らによる実務面の講義で構成されている。ケーススタディーの講師は、ユニクロの柳井正、ワタミフードサービスの渡邉美樹、ドン・キホーテの安田隆夫、ガリバーインターナショナルの羽鳥兼市、ウェザーニューズの石橋博良、フューチャーシステムコンサルティングの金丸恭文、マツモトキヨシの松本和那というそうそうたる顔ぶれ。それぞれが語るビジネス立ち上げのプロセスや起業の理念、経営論、起業家論などは圧巻で、ビジネスモデルだけでなく彼ら自身の「オンリーワン」ぶりが鮮明になっている。
実務面では、投資家に向けた事業計画書の作成やプレゼンの手法、スタートアップ時に必須の法務対策、実際に事業を動かす際のプランニングなどが、第一線の教授、弁護士、コンサルタントによってまとめられている。
大前がメッセージの中で強調するのは、アイデアのレベルにとどまっている事業計画をコンセプトにまで深めることの必要性である。その点から7人の講義を見渡せば、世界中に同じ商品を同じサービスで提供するというアイデアをもとに企画・開発から販売までを行う柳井、アメリカで得た「食べながら飲む」というアイデアをもとに、マーケティングを重ねて新業態を確立していった渡邉など、それぞれの話に模範例を見いだすことができる。
競合相手が現れても「一人勝ち」できるコンセプトが起業の条件だと大前は本書の中で語っている。最先端の戦略的思考と成功のノウハウを学び、「一人勝ち」を目指す起業家予備軍に、おすすめの1冊である。(棚上 勉)