エゴについて
★★★★☆
帯にあったストレーガ賞受賞の文字に加えて
著者が若き物理学者であるとのことが、本を開いた理由です。
開いた先には、とてもきれいな文章が綴られていて
喩えれば最初は薄いベージュ色でした。
もちろんいろんな色を見せながら、話は展開します。
しかし、この書き手の文章のなんと素敵なことか。
そして、孤独のそばにエゴがあることを確認させられます。
アリーチェに自分を重ねてしまう女性は少なからずいるのでは。
素数ほどに頑固でどうしようもない部分が誰にもあって
でも変えられなくて。孤独と向き合うときにいつも
闘わなければいけないもの。がエゴなんだと思いました。
本当に切なくなります。
★★★★★
イタリアのトリノを舞台にした恋物語。幼少期、全く違う場所で心身に障害を負った少年少女が本当に切なく、不器用な心の綾を繰り広げます。そして、余韻を残した終わり方はどこか温かく、心を豊かにしてくれます。このような感覚にはなかなか出会えるものではないですね。私も運命なのか、ヨーロッパで唯一訪れたことがある町がトリノ。読書している時間は非常に濃密でした!
素数である前に
★★★☆☆
引き込まれてしまう物語。先を知りたくてどんどんページをめくって、一気に読んでしまった。
でも読後感はなんだかすっきりしない。
素数は一つではなく沢山あるのに、それぞれが孤立して他との接触を拒否している。
素数同士の中で最も距離が近いのが双子素数。双子素数のアリーチェとマッティア。
心を病んだ二人。理解できる唯一の相手なのに一緒に幸せになることが出来ない。自分の世界でいっぱいいっぱいだから。
「変わるべきなのか」「変わらなきゃ」「やっぱり変われない」の繰り返しによる葛藤は程度の差はあるが誰にもある。私もそこに共感した。
でもこの二人の場合は個性の範疇を超えてしまっている。それでも変わらなくてもいいのだろうか。
「素数は永遠に素数」って言われるとそうなんだろうけど、でも人間は決して素数のように生きられない。
マッティアが素数という自意識から解かれてとなりの数字、周りのたくさんの数字に目を向ける日がくるのだろうか。
だからやっぱり最後は許せない。アリーチェは恐れたのだろうか。マッティアだけが変わることを。
何か割り切れないものを感じた。素数だけに。なんちゃって。
孤独とは・・・
★★★★☆
「素数」「孤独」ということばに惹かれて手に取り、そのまま一気に読み切りました。
自分も素数なのかな、と思ったし、人ってみんな孤独なんだよな、ってさびしくなった。
個人的にはできればちがう結末がよかったかなと思う。
けど、独身時代に読んでいたら、また違った感想を持ったかもしれない。
いずれにせよ、心に響く素敵な世界でした。余韻が残ります。
人生の結末は自分自身で選び、進んでいくもの
★★★★★
「海外小説には興味なし」と今まで見向きもしなかったけれども、友人に強く勧められて読んでみました。
タイトルから拒否反応がでそうだけれども、内容は生きるのに不器用な男女の姿を描く。
しかし、それがただの恋愛小説と括れないのが、物理学を学ぶ大学院に在学中の作者のバックグラウンドである。
安易に「結末」を描くことなく、あらゆる場面で複線のイメージを描き、読者自身で結末を導き出すように提示するのです。
人生の選択の答えは人から教えてもらうものではなく、自分自身で選び、進んでいく。
勧めてもらった友人に感謝の一冊です。