雰囲気ある
★★★★☆
今回は、関係がギクシャクしてきた人びとのお話。
この人は描き方というか、雰囲気の創り方がすごくうまい。
しかし、何を伝えたいのかが読み取れない。
気が向いたときにパラパラ読むのも良さそう。
流れるような文体
★★★★★
「熱帯魚」「グリンピース」「突風」の3作品が収められています。最近、著者の本を読む機会が多くそのたびに感心させられます。その理由は流れるような文体にあります。登場人物の心理描写や視覚的な描写にしても細かいところまで描いているのにもかかわらず、これだけ流れるような文章が書ける小説家は少ないと思います。ただしどの本にも共通しているのが最後の締りが無いこと。本書の中の「突風」には珍しく最後の締りがあったので、この中では一番好きな作品です。
クールな青春小説。。。というコピーはいささかいいすぎか。。。?
★★★☆☆
快楽は常に裏切られ、縮小され、骨抜きにされ、真理とか、
死とか、進歩とか、闘争とか、歓喜等等、強力で高尚な価値として名をなさしめている
。勝利を収める敵は欲望である。欲望にはエピステーメー(プラトン・アリストテレスが、
単なる感覚的知覚や日常的意見であるドクサ(=憶見)に対立させて、確かな理性的認識をさして呼んだ語。)
にふさわしい威厳があるが、快楽にはないのだろう。
なるほどなあ〜〜と思った作中の文章であります。
「嗚呼、いいなぁこの感じ」
★★★★☆
ある人がいろんな苦痛やら喜びやらいろいろな感情を持ち、その人生の経験から自らの努力により成長してなにかを勝ち得るのが物語の目標であるのならば、決してそんなのんきな物語ではない作品。
驚くほど面白かった。グリンピースを彼女に投げちゃう男や一流サラリーマンが鄙びた民宿バイトする話やバカなんだか賢いのか(たぶんバカ)鳶職のなんでもない日常が描かれた短編集。
作家にあんた物語書く気ないだろうと思いながら、ニタニタして読んでしまうほど直木賞作家では味わえない小説の面白さを与えてくれる作品であった。
エンタメ系の作家は確かに読みきったという後読感をもたらしてくれるかもしれない、それは小説が漫画や映画というメディアに打ち勝つひとつの方法なのかもしれない。
しかし、漫画は漫画、映画は映画、そして小説は小説と考えたときに、極めて小説の面白さを体現したのがこの作品のような気がする。
東野圭吾・恩田陸・宮部みゆきも確かに面白い。しかし、吉田修一も確かに確かすぎるほど面白い。
……
★★★★★
とびっきりクールな青春小説!!
と宣伝されているが…?? どこが?? 阿部和重の「グランドフィナーレ」もロリコンが現実とのつながりを取り戻す話、とか宣伝されていたりしたが、とんでもない誤読。基本的に帯って信用しないほうがいい、売るための文句だから、わりと中身が違う。
で、吉田修一。売れているぶんだけほかの純文学作家よりもめぐまれていると見られているかもしれない。が、このひと、下手にエンタメがかけちゃうものだから、一般読者からまともに評価されていないんじゃないのか、という気がする。ふつうの人が小説を手にとる場合、残念ながら、求めているのは「物語」であって、「小説」でない場合が多い。はっきり言って、「物語」と「小説」は、全然違うし、にも関わらずみんなあんまり区別がついていない。
「小説」はなんでもあり。だから、「物語」がある「小説」もあるし、「物語」がない「小説」だってある。にも関わらず、話がおもしろくない!とか、あとに残るものがない!とか平気で言われたりする。
話がおもしろい小説がおもしろい「小説」の条件では、全然ないんです。嘘だと思うなら、この短編集の最後の「突風」を読んでください。おそらく、何これ? と思うでしょう。何これ? が感想でいいんですよ、そう思って読んでみてください。