しなやかな体で仲良くたわむれる白クマのカップルや、子に乳を飲ませている母馬、生まれたての子ジカが立ち上がるのを見守る親ジカ、親羊の背中に乗っているあどけない子羊など、アラスカの自然に生きる動物のカップルや親子が、ほっと心温まる情景を繰り広げている。
「一頭のクマを見たことで、あたりの空間は突然ひとつの意味を帯びてくる」と星野道夫は書く。クマの存在を意識することが、忘れている生物としての緊張感を人に呼び起こしてくれるのだと。
とはいえ、ここに登場している動物たちの家族写真のどれにもやさしい視線が注がれていて、彼らに備わる野生の怖さを忘れさせてしまう。手を伸ばせば頭をなでることもできそうな錯覚に陥るほどの、動物の「聖家族」集である。(中村えつこ)