筆者も述べていますが、高校と大学の物理の違いは、定理・公式の導出の過程に重きを置いている点だと思います。そのため、ほとんどの物理入門書は、この伝統に従って、多くの式を用いて比較的厳密な理論を展開します。もちろん、このような厳密さによって養われる物理的な感性は、将来物理を勉強していく上で必要不可欠なものですが、一つ一つの式の意味に固執するあまり、物理の全体像が見えにくくなるという欠点があります。
本書は比較的平易に書かれており、それほど時間をかけずとも読み切ることができ、大学の力学ではどのようなことを学んでいくのか、という大略が分かるようになります。厳密さをはしょっているので枝葉に惑わされることもなく、といって、その厳密さは筆者が強調する「イメージすること」で定性的に理解させることに成功していると思います。
本書のもう一つのお薦めは、大学物理に必須な基礎概念が、問題という形でそこここにまぶされているところです。平易だからといって、決して一般の入門書と比べてレベルが下がっているというわけではなく、エッセンスがしっかり凝集されています。また例えば「万有引力の逆二乗則は、それが遠隔力ではなく近接力であるであることを想像させる」といった多面的な見方も載せています。ただ単位をとらせるだけの本であれば、絶対不必要なこれらの記述から、筆者が読者に物理の面白さを説きたいという意欲を痛感します。
本書を物理を勉強する上のガイドマップとして、必要であれば、他の成書で厳密な理論に入っていくのがいいと思います。
唯一、本書で欠点を挙げるとすれば、タイトルに偽りを感じる点です。本書だけでは、恐らく単位は取れないでしょう。ただ本書を読んだ後に改めて成書を学ばずとも、演習問題を数題解けば、必ず単位が取れると思います。
はっきり言ってこの内容で単位なんか取れないですよ。
本の内容自体はわかりやすく、理解できたんですが、
大学の定期試験の問題を解くのにはなんも役に立ちませんでした。