今思い出せる、吉里爽の最初の愛読書。
ストーリーの細かい部分を思い出せる訳ではないが、
乱歩の秘密めいた世界にはまるきっかけになった。
おそらく小学3年生くらいで読んだと思うが、当時、
都内の北区赤羽というところから都心の新宿に引っ越した頃で、
ストーリーのどこかに身近な地名が出てきてドキドキしたのを
覚えている。
空き地で野球をして帰宅する途中の冬の夕暮れなどには、
乱歩の世界がすぐ側にまで忍び寄っているような気がして、
家路を急いだものだ。
当時は、乱歩全集が図書館にずらりと並んでいるだけで、
そこが異次元への扉のように思えたものである。
しかし、当時手にしていた同じ出版社のレトロな装丁の方が
数段魅力的に思えるが、いかがなものか。