二十面相の少年探偵団への異様な復讐劇!?
★★★★★
本当に面白くて次々とページを繰り、先へ先へ読み進めて行った感じである。このシリーズの三冊目のこの巻は、ページ数も前の二冊より大分多かったけれども、読んでゐてそんな感じはなく、寧ろ紙数が足りないのではと思はれる程だった。
しかし、その割に、出て来る場面は限定されて居り、(1)麻布の洋館(2)池尻町、桜丘町の渋谷近郊(3)奥多摩の鍾乳洞といふ三箇所のみである。その場面展開も、何れも何役(妖怪博士他)も変装する二十面相、少年探偵団、後から出て来る明智探偵といふ登場人物であり、その中でのみ虚々実々の駆け引きのやうな進行が続くわけである。後から振返れば、比較的に単純な構成なのかなとも一見思へてしまふのである。
と言へ、実際読んでゐる時には、意外な設定場面から話が進んで行くので、ついいつい引き込まれてしまふし、後から種明かしされる周到な仕掛けと意図にも、成程と唸ってしまふのである。やはり、この巻を面白くしてゐるのは、少年探偵団に対する二十面相の異様とも言へる執念深く復讐を果さうといふ思ひによって現れて来る意外性あるストーリー展開の妙にあると考へる。
そして、ストーリー以外で興味深く感じるのは、当時の描写場面と現代のその場所とでは、かなり違ってゐる事実に氣づく事である。<麻布・六本木はひどく淋しい>といふ記述は、七十年程前の東京を想像するよすがにもなると思はれる。更に、最後に感じた楽しみは、捕らはれてしまった二十面相のその後はどうなるのだらうといふ次の展開への尽きない関心が湧いて来る事である。
挿絵入りでないと・・・
★★★★★
乱歩の少年探偵団ものは光文社の江戸川乱歩全集がすべてカバー
してくれるけれど、やはり挿絵の入った単行本で読みたいもの。
乱歩はたしかに少年向けにこの物語を書いたのであるが、その
構想は成人向けのものと基本的に同じ。一寸刻み五分試し。
ひひひひひ・・・という怪人の声は少女にも向けて発している。
本シリーズは第一巻の「怪人二十面相」「少年探偵団」を
引き継いだこの3作目で軌道に乗った。
日原鍾乳洞
★★★★☆
東京奥多摩にある日原鍾乳洞が出てきます。
昔からこの鍾乳洞が出てくる貴重なお話です。