このふり返った犬の絵を見たことがあるでしょう。
その本を開いたことがなくとも、その「線」の確かさを感じるでしょう。
愛や友情、老い、死、普遍的なテーマを描き続けたガブリエル・バンサンへの賛辞集。
彼女の仕事について、いろいろなひとが語っています。
そのエッセイもさることながら、年譜やブックリストなど、
ファンならずとも欲しい資料が満載です。
数多くの絵本を残したバンサンの人となりが忍ばれる、精美なつくりになっています。

このひとの絵本の前では、大人や子どもといった分け方など無意味だということに気づきます。

鉛筆で無造作に引かれた線、余白の雄弁な沈黙。

『アンジュール』『たまご』といった簡潔なスタイルの作品から
アーネストとセレスティーヌシリーズなどの温かみある情緒的な作品まで
ガブリエル・バンサンの多彩な魅力を、
多くの人びとのエッセイや短文によって
丁寧に語り尽くそうとした一冊。

刊行本一覧などの他、アーティストとしての作品、
著者の肖像写真も収録され、データブックとしても充実。