読み物としても面白い
★★★★☆
学校で使用されている教科書は重要なエッセンスがぎっしりと少ない紙面にまとめられている。これだけを学習すれば良いわけだが、面白みにかける。科学史的要素、実験のこぼれ話しなどが少ない。
本書、新しい高校化学の教科書は教科書では教えてくれないエピソードも拾っていて読み物としても面白い。教科書はつまらないという高校生やもう一度理科を学習したい社会人にお薦めです。
この著書から先に進むときのターミナルとして役立ちそう
★★★★★
高校化学の学習内容を、読み物として読みやすくして理解を進めてくれる書籍。
原子、化学結合、物質の状態、化学変化の仕組みと色々な反応、無機物質、有機化合物、高分子化合物、人間と化学のかかわりという題と付した全八章構成で、それぞれの節のはじめには問いがあり、発展コラムも適宜挿入し、化学式や図表を多く使った説明は本文と共に読んでいくとわかりやすい。
昔、体を壊して途中で終わった化学の学習が、この著作を読んでいくと何十年かぶりで出来て嬉しい。その内容も、実際の生活で関わってくるモノについて多くを教えてくれるので、面白い。ものづくりはもちろん、造形芸術も化学の見方から捉えると違う見え方をしてくる。
この著作の内容についての批判は少なからずあるだろうが、科学の知識が既におありになる玄人の方々よりも、科学について少し苦手意識を持っている人にとってこのようなシリーズはありがたい。このようなアプローチがないと科学嫌いになってしまう人たちは一定程度いて、このような著書から苦手意識を払拭して、その独自の論証形式なるものに触れて理解できていく、その道筋を作ってくれているという意味で、このシリーズは十分に価値があると思う。
ここから化学関連の別の著書に進むとき、この著書が便覧としてより役に立つと思う。次はこのシリーズのほかの著作も読んでみたいと思わせてくれた一冊。
所詮は俗流の教科書批判
★☆☆☆☆
日本の検定教科書は、俗流の教育論によってボロクソに言われていますが、一応研究者であ
る僕からみて、なかなか面白いですし、芸術的といってもよいぐらいよくできてますよ。それ
に引き換えこの本のつまらなさときたら…。かえって、シモネタ教科書のほうが、ネタと
割り切れる分だけ面白い。余談だが、萌える統計学と称される某漫画は、俗流の教育論を
ぶっこかないだけのことはあって、本物には劣るもののなかなか面白い。
「検定教科書というのはあいかわらず教科書らしい構成で分かりにくい」とか、特に理科の
検定教科書というのは、「なかなか”万能”の法則というものが出てこず、用語の定義も
科学全般で成り立つのか、特定の実験でしか成り立たないのかよくわからん書き方で」なんて
いうことを思う人がけっこういるようで、その形を”打ち破る”本が最近いろいろなレベルで
かかれるようになっている。
しかし、何故文部省検定教科書のみならず、まともな教科書(大学を含む)はそのような
一見分かりにくい構成をとっているのか?それは、そのとっつきにくい構成に慣れることで
「その分野独特の論証の仕方」を身につけさせるためだ。「その分野独特の論証の仕方」が
わかっていれば、案外そのあとは知識の海に埋もれずに、なんとか自律して勉強を進めて
いけるのだが、「その分野独特の論証の仕方」をとらえそこなうと、非常に迷走してしまう。
スポーツで下手な我流とか、俗流を身につけると、後に響くのとおんなじ意味で、高校生
には有害という指摘は誤っていない。
この本にある”化学”は、内容自体に大きな誤りはないけれども、我流とか、俗流の域を
脱さないものだ。それでいて、手短に知識をつまみぐいできるかというと、そうでもない。
その分野独特の論証の仕方をいきなり模させるのがよいか(という点で言うと、文部
科学省検定の教科書は、実にバランスがとれているがそれ)はともかくとして、
分野独特の論証の仕方どころか、科学全般に共通する論証の仕方を著者らの諸著作には
あまりに軽視しすぎていて、その代わりに、科学オジサンだとか、あるある大辞典のような
科学っぽい番組でよく使われる、こけおどしが入ってきているそういう特徴がある。
この本もまたしかりである。
教科書づくりにお呼びがかかる人というのは、それなりの研究業績を持つ人たちで、
それにおよびのかからなかった連中が、「新しい」とか「正統」とか言い出すと、わけが
わからないことになるわけで、「相対性理論の新解釈」とかいったのと、同じなのやら
少しはましなのやら?
内容を絞るというアイデアだけは評価できますが、その絞り方というのもよいのやらぼけているのやら?
教科書には正確さが大切
★★☆☆☆
私は、教科書に目新しい内容はそれほど必要ないと考えています。
その代わり、執筆時点で可能な限り正しいと考えられる内容をしっかり書き表すことが必要と考えています。
この本は、新学期に間に合わそうとしたためか、正確性に問題ありと思います。第一章の原子核の構造の解説で、中間子の発見者が湯川秀樹博士と書かれています。(湯川博士は、中間子の存在を予測して論文を書いた。それによりノーベル賞か授与された。理論を打ち立てたのであって発見者ではない。)
何も知らない人が、「教科書」に載っていたからと信じてしまった時は他の一般の書籍より問題が大きいです。
「教科書」と謳う以上、通常より厳しく校正していただきたいものです。
教養書としては二重丸、実用書としては…
★★★★★
私はこの本に、2つのことを期待した。一点目は、読んで面白い「教養書」としての側面、もう1つは、高校で十分に化学を学ばなかった人、習ったことを忘れてしまった人が、実生活でさまざまな物質(たとえば、食品添加物や医薬品)に接したときに、それについて的確な理解をするための「実用書」としての側面。
このうち、前者については十二分といえる内容だ。酸素分子の構造(これは理系の大学2年生くらいで習う内容だが、一般人レベルではほとんど知られていない)、水の電気分解のメカニズムなど、大学受験までみっちりと化学を勉強したと自負している私でも楽しめる内容だった。
しかし、後者の「実用書」としての側面は、新書判1冊に高校化学の内容をコンパクトにおさめるという制約上、取り上げる分子種が本当に基本的なものに限られており、物足りない内容になってしまった。もう1冊、有機・生化学分野の各論書を「発展編」として出版してもいいのではないだろうか。
内容的に高く評価したいのは、化学の暗記科目としての側面、たとえばそれぞれの反応の実験手順や温度条件などの細かい情報をバッサリと削ったこと。実験するなら実験の手引きは別の本に譲るべきだ、という立場なのだろう。
逆に内容的に不満なのは、各章を分担執筆者が別々に書いていて、表記の統一や相互参照、各分野の連関性への言及が必ずしも十分でないこと。たとえば、大抵の高校生が{暗記」という道を選ぶクロム酸のpH依存性
2[CrO4]2- + 2H+ ⇔ [Cr2O7]2- + H2O
は、別のところに記述されている「ル・シャトリエの原理」で簡単に説明できるのだが、この本は旧来の教科書同様、クロム酸は酸化還元の項で扱い、ル・シャトリエの原理は化学平衡の項で扱う、というふうに、別々の扱いになっている。筆者たちは精力的に改版する予定のようであるから、積極的にフィードバックしていきたい。
桜萌堂
★★★☆☆
これだけは学んでおきたい!
現代人のための「検定外教科書」
現代社会で生きるために必須の科学的素養が身につく
読んでわかるから面白い!現代人に必須の科学的素養が身につく検定外高校化学教科書
<本シリーズの特長>
●高校理科の内容の羅列でなく、「これだけは」というものにしぼった。
●丁寧な説明を心がけ、「読んでわかる」ことにこだわり抜いた。
●「なるほど、そういうことか!」と思わず膝を打つところが随所にある。
●クイズやコラムで、最後まで飽きさせない工夫をした。
●持ち運びに便利なコンパクトサイズ。