やはり泣けてしまう
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幼稚園の時読み聞かせで「泣いた赤おに」を聞いて泣きました。
自分としては、泣いた最初の本でした。
子ども(小二・読書は苦手)に読み聞かせようと思い、この本を選びましたが、浜田広介の原文そのままなのはこの本が初めて。赤おにが「おいしいおかし」をこしらえたり、子どもと遊ぶ絵を描いて飾って村人を待っているディテールがなかなか意外な感じでした。青おにのところへたずねて行くのも長旅だったり。子どもは意外とそういうディテールがなおざりだと気にするので、きちんとしていてさすが原典というところです。
そのかわり言葉遣いはやや難しく、ちょっとなじみのない表現もあるかもしれません。でも、わからない言葉が出てこない本ばかりでは語彙が広がらないので、せっかく読むならこの本がいいかなと思いました。
自己犠牲について考えました
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平易な文章の絵本であっても、深い内容であれば、様々な読み方ができると思います。
私は、このお話に「自己犠牲」というものを感じました。
三島由紀夫は、男にとって最も尊いものは自己犠牲であると言ったということですが、それがどのようなものであるかが、このお話の中に垣間見れるのではないかと思います。
確かに赤鬼は泣きましたが、読んでいる私はそうではなく、果てしないすがすがしさを感じました。私には「泣ける」本ではなく、陰徳と共に強く生きる指針の本でありました。
尚、本書は原文を改変や省略することなく、全文を載せてあります。それでも、少なくとも小学校高学年以上であれば、十分に読めるのではないかと思います。
ハッピーエンドでない美しさ
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絵もストーリーも素晴らしい、絵本としては最高の作品のうちの一つであると思います。絵本の中では文字が多く、読書への導入としても扱えるのではないかと。
古来より人は鬼を多く、「悪」として描いてきました。もしくは「悪」と呼ばれるものを鬼に具現化してそう呼んでいたのかもしれません。人間の悪しき部分を象徴して描かれていたはずの鬼が、いつのまにか一人歩きをし、「悪」として存在するようになったのです。それでは鬼があまりにもかわいそうだ。外見が鬼であるだけで、決め付けることはできない。外見に捉われるなと言うけれども、一番外見を気にしているのは大人です。学歴や資本にこだわり、それを人の価値だと決め付ける人種。全員では決してありませんが、子どもの生きる世界の多くは大人がつくっているのです。
友情を大きな軸に描かれている本書ですが、友情の下にある隠れたテーマとして描かれるのはもう一つそれではないかと私は思うのです。
深読みのしすぎと言われればそうかもしれませんが、一度鬼を誤解した村人がいなければ青鬼はあんなことにはならなかったのです。
人は知らずとハッピーエンドを求めているのかもしれない。ハッピーエンドでない美しさが、本書をより素晴らしい作品へと磨き上げているのだと思いました。
本当に素晴らしい良書です。
本物の友情とは・・・
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私が「友情」という壁にぶつかり、苦しんでいたとき、この本に出会いました。外側だけの、人目には美しく見える「友情」ではなく、友情の中にある、本物の美しさ、純粋さを教えられ感動の涙を流しました。私にとって大切な大切な絵本です!
いつまでも語り継がれるべき絵本
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この絵本は浜田広介の原作をそのまま載せてるのが特徴です。
現在出版されている他の「泣いた赤おに」とはひと味もふた味も違います。
原作は短編小説ほどの長さで、ふつうの絵本とくらべると長めですが、
そのぶん物語の情景や赤おにの心の動き・悲しみがしみじみと伝わってきます。
そして、もうひとつ特徴的なのが梶山俊夫の力強く独創的な挿し絵。
物語をより趣深いものにしています。
大人になっても読み直したい、絵本の中の名作といって良いでしょう。