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見ることの塩 パレスチナ・セルビア紀行

価格: ¥2,520
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 作品社
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水戸とセルビア ★★★★☆
パレスチナとバルカンにおける連鎖的な報復状態の記述を読んで、
頭に浮かんだのは、最近読んだ山田風太郎『魔群の通過』でした。
日本史上類を見ない悲惨な内戦と作者が位置付けた水戸藩天狗党の物語が、
異国において現在も繰り広げられている惨状と一本の線で自分の中でつながりました。
「なぜ、どうしてこうなったかわからない」
環境と感情が産む報復的戦争状態は人間の極北の状態として、
特異な地方の紛争としてでしか受け取らない向きもあるかもしれませんが、
日本人にとっても、けっして対岸の火事ではない世界だと思いました。
重く長く続く読後の感覚 ★★★★★
「私の見ることは塩である。私の見ることには、癒しがない」
もちろんこの本を読むことにも癒しはない。
ここには結論や解決がないのだ。
ここにあるのは、結論に背を向けた重い語り。
読むことで塩の中に沈み込んで
読んだ後も
長く乾いていくような経験である。
心と頭を揺さぶられる ★★★★★
イスラエルと旧ユーゴスラビアのルポ。
パレスチナ・セルビアに同情的なスタンスから書かれています。

ただ、そんなことよりも私が感銘をうけたのが、宗教対立などというキーワードでくくれるような、バカバカしい二項対立の構造なんてない、ということ。要するに私たちの社会と変わりありません。自分たちの社会の問題をより先鋭化させるとどうなるのか、考えさせられる重みのある本です。

ドイツ・オランダ・ポーランド系イスラエル人は、スペイン系イスラエル人を差別し、かれらはアラブ系イスラエル人を差別する。この構造をいっそう複雑にするロシア系イスラエル人の存在。セルビア人もアルバニア人も、またクロアチア人も虐殺は行っていた。宗教対立ありき、ではなく虐殺と紛争の方便として宗教が持ち出される事実。この対立構造に当てはまらないがゆえに双方から差別。迫害を受けるロマ。

知識として知っていても、改めて、目で見て、肌で感じた人の書いた本を読むと、重みがちがう。単純な二項対立の枠組みが、いかに自分の思考を停止させることか。
知らなかったということの恐ろしさ ★★★★★
パレスチナの状況については、興味を持っていたので一通り知っているものだと思っていたが、一読して持ちあわせていた知識の誤りと底の浅さに愕然とした。これは一体何なのだと背筋が寒くなった。もっともアメリカ寄りの報道で知りえることの限界がそこにはあるにせよ、こんな状況であるとは全く腹立たしい。一様にしたり顔の評論家たちや日本のジャーナリズムの怠慢を激しく罵りたい思いである。セルビアにしても同じこと。何から学べば良いのか、何を信じればよいのかという人の価値観を形成する情報ソースの選択と吟味を重要視しなければならない思いで一杯になる。
これは大変貴重なルポルタージュである。感情を出来る限り排除しようとしている姿勢にも共感できる。それにしてもこの世界には、言いたくはないが、「絶望の連環」が厳然と横たわっている事実に慄然とする。
こういったことをもっと勉強しなければ、知らず知らずのうちに他人の頭を殴りつけて全く気づきもせず、平気な顔をしている人間になってしまう。そんなことを強く意識させる本である。
加害者が被害者であり、被害者が加害者である多重構造 ★★★★★
「ユダヤ人一般など存在せず、誰もが細かな区分法により分類」
「職業、食事作法、音楽、微妙な言葉遣いなどによって互に隔てられていた」

世界遺産に認定された白い街テルアビブ
アシュケナジーム系の豪華なマンション群
隣のミズラヒームの居住地は公園等で囲い込まれ遮断
慎ましやかなイエメン系集落
ある一角だけが妙に寂しい
調べてみると、1948年までアラブ人の住居地区だった
テルアビブは無人の砂漠に零から建設されたという神話も偽りだった

外国人労働者街
皮肉にもシオニスト・ヘルツルが『古くて新しい国』で夢想した世界中の言語が
語られるコスモポリタンな商業都市の姿に最も近しい

内通が発覚して私刑に処されたパレスチナ人は2000年に150~200人
私刑による死者数はイスラエル軍による殺害者数を凌駕

内通者の中における女性の割合と意味
イスラム社会における家父長制、名誉の殺人
イスラエル側も女性を意図的に内通者のターゲットに

将来旧ユーゴ諸国全てがEUに加盟した時
境界がもう一度廃棄されることになる
「大きな犠牲を払って勝ち取った各共和国の境界線など何の意味もなくなる」

セルビア本国人と難民間の溝

コソボ紛争でのロマの悲劇
「セルビア人とアルバニア人の双方から残虐行為に手を染めるよう強要され
双方から軽蔑と憎悪を向けられた」

「民族と宗教の違いが戦争の原因となったのではない。戦争によって引き起こ
された異常な状況が、エスニックな自己同一性を人々に準備させた
敵との対立関係を通して新しいアイデンティティを与える。それが民族であり
宗教であった」

「他者を暴力に満ちた野蛮と見立て、それを鏡像としてみずからの美化と神聖化
へと向かう者達が、現実にはその場所に野蛮と暴力を導入」

ある犠牲者がかつて別の場所では加害者であったのであり
ある加害者がかつて別の場所では犠牲者であったのだ