入門書にしては値段が高い・・・かな?
★★★★★
アーサー王伝説を楽しく読みたい人にオススメだ。アーサー王伝説は多岐に渡るので、本書のように物語の中核となる話のみに限定して語るのは、まあ、王道といえるだろう。最大の特徴は、トマス・マロリーの『アーサー王の死』や作者不詳の『メルラン続篇』など、多くの古典的名作や流伝本の一文を本文の物語に組み込んでいることで、原典を楽しめるようにもなっている。もう一つの魅力は、図版に中世以来の挿絵や版画が頻繁に用いられていることで、これが中世のイメージを助けてくれるのと同時に、当時、民間に流布していたアーサー王の伝説本の雰囲気を現代に伝えてくれるのだ。コラムも充実していて、なかなか学術的だ。聖杯や漁夫王、湖の姫など、伝説の謎めいた部分について解説してくれるのはもちろん、トマス・マロリーやクレアチン・ド・トロワなどの作者について解説してくれるところも嬉しい。欠点をあえて挙げるなら、原典を引用している箇所がよく分からないこと。一応、文頭にしるしがついているけれど、著者の文と引用文の文字の大きさがほとんど同じであるため、引用文がどこで終るのかが分からない。けど、それくらい。アーサー王伝説の書籍はまだ読み始めたばかりだが、なかなかの良書と言えるのではないだろうか。