優れた暗号の教科書。現在は改訂版の入手を
★★★★☆
本書の発行は1993年でインターネットが急速に普及しはじめていた時期です。「まえがき」に「(前略)最近の計算量的暗号理論を含む専門書、初心者にも暗号理論の本質を容易に理解できる専門書、が求められていると判断したからである。本書では、定理の証明なども、単に困難だからという理由だけで省略することはせず(後略)」というように教科書としての使用を想定したものです。
解説に続いて例題、演習問題が収録され、暗号の基礎の理解を本書を通して深められるように配慮されています。よい教科書の見本のように思います。
本書の第3章の対称暗号で解説されるDES (data encryption standard)の安全性の低下から、NISTの公募によって2001年に後継の暗号標準AES(Advanced Encryption Standard)が定められました。これらの時代の変化に対応した改定版が2002年に発行されています。(星4はこのため)
なお、本書を見ると1992年公開のRobert Redford主演の暗号を題材とした映画"Sneakers"をつい思い出してしまいます。
暗号技術を理解するために
★★★★★
本の題名が示すとおり、暗号理論の入門であり、SSL等の暗号技術について論じる本ではありません(大学の教科書みたいなもの)。
SSLや証明書等の暗号技術は、RFCの記述通りに実装すれば、動くものを作ることが可能です。しかしRFCには暗号理論が前提で記述されているため、RFCのみでは”理解が浅い”と感じるでしょう。
当書は暗号理論を広く浅く記述してあり、暗号技術を理解するために理論を学ぼうとするには良い入門書になると考えます。
センスの良い本
★★★★☆
文章も比較的読みやすく書かれており、随所にセンスの良さを感じさせた。
手元においておきたい1冊だ。