話のおもしろい山伏と飲めるバー。行きたい!
★★★★☆
土曜日ごとにバー“えいぷりる”に集まる近所の人々と一人の山伏。
山伏が行脚の中で出会った不思議な事件を、
酒の肴に聞いているという形の連作短編集になっています。
現代で探偵役が山伏って斬新。
でも一般の世界だけど、山伏だから入り込めたり遭遇する事件が上手く考えられていますね。
本格推理で短編というと、結構解決が腑に落ちなかったり、
違う解釈も出来るんじゃないのーとか穿って読みがちなのですが、
“えいぷりる”のマスターを始め、登場人物の面々が話半分みたいに聞いているので、
読者もそういうスタンスで軽く読めるミステリです。
笑って応えてっ!!
★★★★★
おもしろい
トリックもさることながら、やはり有栖川有栖さんの特筆すべき妙味というのは、キャラクターでしょう。
銘々が個性があって気が付くとすっかりストーリーに引き込まれてしまってます。
そして、たっぷり散りばめられたユーモア。最高です。
笑わずにはいられない(笑)行間から笑いが滲み出てますね(笑)
有栖川先生に笑いのセンスはもろ私のツボです!!さりげない笑い。
何気なく読んでると読み過ぎてしまいそうなくらいさらっと、皮肉が効いてたり、エスプリに富んた笑える表現がなされてるんですよね〜
じわりじわりとボディーブローのように効いてくるんですよ、この笑いが(笑)
そして、物語の最後の一行でちゃんとオチまで付けてくれていてもうサービスばっちり!!(笑)
キャラクターもユーモアもばっちり。ミステリーとしてもよくできてる。
言うことなしですっ!!
解説に価値あり
★★★★☆
適当本として読んだけど、結構気骨のある短編集だった。
いや、一話一話は、旅情・限られた容疑者・単純な謎・意外な謎解き、と質のいい2時間ドラマの原作のようなものなのだが、語り部(=探偵役)が山伏だ。山伏について考えたことなど、今までの人生合計しても10秒くらいしかなかったと思うのだが、この本を読んでいる間はじっくりと考えさせていただきました。
荒行の修行僧って程度の理解ですが(-_-)
ドラゴンボールの悟空のようなものかと。
で、最終話に、それまでも眉唾気味に山伏の話を聞いていた面々が、話の真偽を疑う言葉を吐いた途端に、山伏は二度と目の前に現れなくなりましたとさ。ちゃんちゃん。である。疑うとつまんないぞと言う訓話だったのだ!
この締めはいいねぇ。余韻の残り方がアラビアンナイトだ。
しかしこりゃ、安楽椅子探偵でもないし、語り部が勝手に事件を話して勝手に解決するってのは、隅の老人? でも聞き手が数人いてそれぞれの推理を語ってみせるってのは、ミスマープルと13の謎のようだし。
と思っていたら、解説が延々と展開されていた。しかも、その解説書いたのは、元山伏(!)の創元推理編集長だと言う。その人物の存在そのものがすごいやん。
その元山伏編集長の解説がまた読み応えがあって、安楽椅子探偵の系譜として保存版のような気がする。この解説の保存だけでも価値アリ、と見た。
地蔵坊が語る
★★★★☆
1996年に出た単行本の文庫化。一部、描き直されている。
東京創元社の名編集者だった戸川安宣氏が、主人公のモデルだというのに驚いた。戸川氏自身が「解説」を寄せており、いきなつくりの一冊になっている。
第一短編の「ローカル線とシンデレラ」は、著者が初めて商業誌に書いた短編とのこと。確かに全体的に若く、それだけにミステリとして丁寧に書かれている。トリックも練られたものが多いし、なにより、読後にがっかりすることがない。著者には、初心を取り戻して欲しいものだ。
『孤島パズル』などとの関係もほのめかされており、興味が尽きない。
山伏の正体は?
★★★★☆
東京創元社の戸川安宣氏はかつて山伏の修行をしたことがあるのだそうです。その逸話を聞いた有栖川有栖は、「山伏を探偵役に据えた推理小説は今までになかったはず」と思い立ち、この連作短編シリーズを書き始めたとのことです。ちなみにその第一作である『ローカル線とシンデレラ』は著者の処女短編にあたります。その戸川氏が書いた解説によると、本作は隅の老人の系譜につらなる安楽椅子探偵とのことですが、隅の老人を読んだことのない私にはその辺りの近似性はよくわかりません。
全部で7つの短編が収められていて、山伏がバーの常連客たちに自分が遭遇した殺人事件を紹介するという趣向になっています。彼の話が実話なのかどうかを常連客たちが疑わしく思っているところが面白く、この辺りは推理小説というものの無責任さに対するパロディとも受け取れます。各話のトリックは有栖川らしく細部まできちんと辻褄の合うしっかりしたもので、長編にも使えそうなアイディアが満載です。