推理作家協会賞受賞作にしてはイマイチ。
★★★☆☆
本書は日本推理作家協会賞受賞作で、期待して読んだが、正直イマイチであった。
短編もののトリックをずるずる引き延ばして長編にしたような作品で、作者の文章は「読ませる」文章なので冗長とは思わないし、面白くないとは言わないが、受賞作としては期待はずれである。
この作品で著者に受賞させるのなら、なんで3つの「読者への挑戦状」を差し挟んだ著者の最高傑作『双頭の悪魔』で受賞させなかったのかと、推理作家協会に文句を言いたい。
著者の作品なら他にも、アリバイ崩しと「アリバイ講義」の名編『マジックミラー』もあるし、火村シリーズに限っても『46番目の密室』や『スウェーデン館の謎』の方がずっと上出来である。
むろん、推理作家協会賞は、対象年度の作品の中で最も優れた作品に授与するものであって、著者の最上作品に授与するものでないことぐらい承知しているが、それにしても他の候補作が「不作揃い」で本書がその年度で一番マシだったというだけのことなら、いっそのこと「受賞該当作品なし」にすれば良かったのにと思う。
それは歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』を読んだときにも感じたことだし、未読だが恩田陸の『ユージニア』もあまり評判は芳しくない(だから読もうと思わない)ことを見ても、受賞レベルを低くすることは推理小説界全体の質の低下につながるということを、関係者は強く肝に銘じるべきである。
普段、推理小説を読まない僕にとっては。
★★★☆☆
文庫で500ページを越える文章量だが、内100ページは物語の前段として人物紹介や熱帯の情景描写、火村と有栖川の「悪」を巡る哲学的会話、等に充てられている。その後は殺人事件の展開を追うために、情景描写が殆ど無くなる。この割り切った構成には、取材旅行をして4年半後に書き出したという編集者泣かせの事情があるのかもしれない。もっと全体的に熱帯や高原の描写が散りばめられるには、執筆時に手持ちの素材や体感・記憶が少なかったのだろう。
その他、気になったのは以下の点。
-1. 雄と雌、男と女を巡る哲学的会話が中盤結構なボリュームで挿入される。でも、それは結局犯人探しのオチには全く関係ない。ここで話されていることは結構面白かったし、登場人物達の人間関係にも絡められたはずなので、もっと練り込んでほしかった。逆に、オチに絡めないなら不要だったかも。
-2. 全体的に人物・心理描写が浅い。特に女性。まあ、トリックと犯人探しのストーリーを見せるための「古典的本格派」の推理小説に、そこまで内面描写を期待するのは筋違いなのかもしれないが、犯人の禍々しさは書けてた気がするので、残念。
-3. ジム・トンプソン失踪事件に絡めたかったのだと思うが、なぜ最後に犯人が失踪できる状況を火村が許したのかが、良く分からない。
以上、「推理小説に文学を求めるなよ」とファンに怒られそうなイチャモンだとは僕も思う。文句ばっかり書きましたが、作者の古典派王道「本格派推理小説」への愛は十分伝わりました。
有栖川受賞作
★★★★☆
国名シリーズで最も評価の高い作品。
マレー半島のリゾートで起こる、密室&連続殺人。
トリックは、よく練られているもので、感心してしまった。
本格ものが好きな人には、お薦め。
ただ個人的に江上シリーズの方が、登場人物のやり取りなど面白くて好きなので、マイナス星一つ。
聞き取れない!
★★★☆☆
2002年のノベルズの文庫化。
国名シリーズは苦しい作品が多い。本書も、「これがマレー鉄道かよ!」と突っ込みたくなる部分が。
まあ、文章は安定しているし、トリックも捨てたものではない。ファンの人には安心して読める一冊だろう。
今回はマレーシアが舞台ということで、関係者との会話も英語が中心になる。しかし、(登場人物の方の)有栖川氏は英語が得手でない。そのため会話中に「××××(聞き取り不能)」というのがしばしば出てくる。斬新な手法だった。こういうトリックもありなのか!
密室を
★★★★★
扱ったものだということで読んだが、面白かった、というのが率直な感想だ。
有栖川と火村のヘンテコな会話で笑わせてくれたら、次はトレーラーのなかで起こる目張り密室殺人。それから連鎖する事件―。
本家エラリー・クイーンにも劣らない、しかしながら有栖らしい本格推理ともいえる。
今まで短編がほとんどであった有栖版「国名シリーズ」だったが、580ページ長編という大作なので、いままで短い推理ものに満足できなかった読者でも楽しめると思う。
火村と有栖川が論理的推理を組み立て、火村が最後でドーンと某セールスマンのように真相を明かす。
ジョン・ディクスン・カー×エラリー・クイーン×アガサ・クリスティ×有栖川有栖÷X=「マレー鉄道の謎」になる、と著者はあとがきで言っているが、自分はX=4である、思える。
本棚の夢語り
★★★☆☆
国名シリーズ第6弾
旧友・大龍の招きでマレーの楽園、キャメロン・ハイランドを訪れた
火村と有栖川。
二人を迎えたのは、舞い飛ぶ蝶ならぬ「殺人の連鎖」だった。
ドアや窓に内側から目張りをされた密室での犯行の嫌疑は大龍に。
帰国までの数日で、火村は友人を救えるか。
第56回日本推理作家協会賞
コズミック・ジャイブ
★★★★★
君も蛍だったのか。
火村とアリスが学生時代の友人、大龍を訪ねマレーのキャメロン・ハイランドでバカンスを、というところが思わぬ密室殺人!帰国までの数日で謎は解けるのか。
第56回日本推理作家協会賞の作品です。
火村が熱いっす!
うさぎ堂本舗
★★★★☆
旧友・大龍の招きでマレーの楽園、キャメロン・ハイランドを訪れた火村と有栖川。二人を迎えたのは、舞い飛ぶ蝶ならぬ「殺人の連鎖」だった。外部へと通じるあらゆる隙間をテープで封印されたトレーラーハウス内の死体。この「完璧な密室」の謎を火村の推理は見事切り伏せられるのか? 真正面から「本格」に挑んだ、第56回日本推理作家協会賞受賞作品。 ◆◇◆国名シリーズ第六弾ということですが、実は私が初めて読んだ有栖川作品がこの「マレー鉄道の謎」でした。マレーシアには何度か訪れたことがあり、興味を持ったのですが、その期待を裏切らない情景描写にはとても満足しています。連続殺人事件の犯人や事件と事件の結びつきなど、それほどひねりを効かせたものではありませんが、密室のトリックに関しては、様々な伏線がきちんとトリックを解く手掛かりになっているあたり、流石だなあと思います。人間の悪や罪について、改めて考えさせられる作品でした。
きのこと林檎
★★★★☆
火村先生とアリスが同級生を訪ねて海外進出!そしてそこで殺人事件に巻き込まれます。高校の国語で習った某有名作品を思い起こさせるラストになっています。1番最後の1文がきれいで好きです。
万事屋本舗
★★★☆☆
火村&有栖シリーズ。これもまだいまだ買ったけど読んでなく・・・。
Alice’s Home
★★★★★
旧友・大龍の招きでマレーの楽園、キャメロン・ハイランドを訪れた火村と有栖川。二人を迎えたのは、舞い飛ぶ蝶ならぬ「殺人の連鎖」だった。ドアや窓に内側から目張りをされた密室での犯行の嫌疑は大龍に。帰国までの数日で、火村は友人を救えるか。第56回日本推理作家協会賞に輝く、国名シリーズ第6弾。
にしやまの本だな
★★★☆☆
火村&アリスのコンビが登場するシリーズの長編。
冒頭にマレー鉄道の地図が出てくるけど、時刻表ミステリーでは無いのでホッとした。本格的な、密室ものです。
しばらくマレーシアの情景や友人との再会がじっくり語られた後、ついに殺人事件は起きる。しかも、内側からテープで全てのドアと窓が目張りされたトレーラーハウスの密室の中で。さらに、殺人は1度ではなく2度3度と続いてゆく…。
密室殺人の謎は、今回はめずらしくいいところまで気が付いたのに、大事なところに気が付かないまま読み進めてしまい、やっぱり肝心なところは読んでみるまで解けなかった。最後の殺人の動機については、うまい! と思った。
個人的にちょっと驚いたのが、アリスが英語を聴き取り、話せていること。
英語は全然ダメだったんじゃなかったっけ…?
ただ、ヒアリングはまだ苦手のようで、ところどころに『××××です。(聴き取り不能)』のような記述が出てくるけど、この中に大事な発言が隠されてたりはしないので、ご安心を。
(2005/07/12 読了)
気入本紹介店
★★★★☆
火村シリーズの国名シリーズ(長編)です。珍しく舞台が海外です。
ミステリー本屋
★★★★★
日本推理作家賞受賞作品完全目張りの密室殺人事件のトリック旧友にかけられた嫌疑を帰国する数日で謎が解けるのか。ミステリー史に残る傑作です。