本書の構成は、「導入部」「戦略的分析の方法」「戦略代替案の作成」「戦略の実行」という4つのパートからなる。戦略的分析については、外部分析(顧客分析、競合分析、市場分析、環境分析)とその企業の内部分析に関し、それぞれの意義と手法が段階的に説明されている。この分析に基づき、戦略代替案については、差別化戦略、コスト戦略、成長戦略、多角化戦略などにより「持続可能な競争優位」を獲得する方法が述べられている。そして最終パートでは、組織と戦略の実行との関係について触れられている。
ここで紹介されているような、戦略的分析から戦略案の作成、実行という一連の流れは、多くのアメリカ企業では当然のように行われている手法である。タイトルのとおり、本書の流れに沿っていけばロジカルに戦略の立案ができるようになっているので、経営者や経営戦略を担当するスタッフにとっては自社のプランニングプロセスを見直すうえで参考になるに違いない。また、経営戦略論を身につけたい読者にとっては、本書を基本書としてその体系を学ぶことが可能である。各章には参考文献として古典から最新の研究まで数多く紹介されているので、これを手がかりに自分の知識を肉付けしていくことができるだろう。
実学を重視するアメリカのビジネススクールのテキストとして定評を得ているだけのことはあり、実用と学習の両方のニーズを満たし、かつコンパクトにまとまっている。(戸田啓介)