平安時代の性愛観とは
★★★★☆
本書は通常の歴史書ではあまり触れられない男女の性愛の歴史について書かれた本だ。現在の男女不平等な性愛観は歴史的に形成されたものだと語る著者は、律令制などの影響で貴族層に「家=家父長制」が成立途上にあり、女性の役割が家の中に限定されつつあったという平安時代中期を舞台に、「今昔物語」などの文学作品を数多く引用して、当時の男女の出会いの方法から性愛観、結婚観などが今とかなり違っていたことをわかりやすく提示することによって、社会学的興味を喚起してくれる。まじめな書物ながら、当時の性器呼称なども書かれていたりして好奇心がそそられる面白い本だ。
開放的な性から家に縛られた性へ
★★★☆☆
古代のおおらかさが残る平安前期から、家制度の登場により徐々に性の自由を失っていく女性の姿を文学作品等の記述から拾い出している。ちょっとフェミニストっぽい記述があるが、鼻に付くほどでもない。古文は読みにくいが口語訳も付いているので読むには問題ない。
買いです。
★★★★★
広く平安朝の作品を題材にそこから浮かび上がってくる当時の男女の有り様を描いており、引用文を丹念に読んでいこうとすれば必ずしも読みやすいとは言えませんが、たいへん好奇心をそそられる一冊となっています。口幅ったく聞こえるかもしれませんが、古典作品というものは有名な作品であれば意外に読みやすい形で入手することができるので、本書が引用している作品へのとば口になるかもしれません。しかし、本書や、姉妹編の「平安朝の母と子」などを読んでいて、以前読んだ山中恒さんの「昔がよかったはずがない」という題名の本を思い出したりもしました。
平安朝の男と女の性の実態がわかる!
★★★★★
『平安朝の母と子』の姉妹編。副題に「貴族と庶民の性と愛」とあるように、当時の性愛を学術的に外観した書。家父長制へ移行する過渡期の男と女の性の実態が当時の文献を駆使して詳述されているので、説得力があって楽しい。読後、平安時代が身近になったように思われた。