歴史本の長短
★★★☆☆
ロシアの通史としては、文章も平易だし、非常に分かりやすい。
しかし、「興亡の世界史」というタイトルから喚起させられるような、
歴史の面白さ、ワクワクさせるような話の展開、というものはなかった。
個人的にはもっとこう・・・人間中心の国家の盛衰を期待していたので残念な気がしてならない。
こういう本てどういう人が読んでるんだろう...。
★★★★★
世界史というと高校生のカリキュラムとして世間で話題になっていますが、確かに教科書としてはこんなに面白くないものはありません。時代を追ってはいるものの、地域があちこち飛びながら、訳のわからない外国語の固有名詞を暗記物と詰め込みながらして、徹夜で試験対策を行うのは何と無味乾燥なことか。
理系大学志望の私は、日本史とセットで受験科目からはさっさと外しました。
でも、やっぱり社会人になって社会で生きていくには歴史って大事なんですよね。特に海外に駐在して仕事をしたり、日本にいてもいろんな外国人と付き合っていく中で、世界史はある程度は常識として知っているべきです。あー、英語と合せてもっと勉強しておくんだった、と思っても後の祭りか...。
と、いうことで、40過ぎという、いい歳をしてこのシリーズを発刊とともに読み始めたのですが、ン十年前に学校で習ったの世界史とは全く違う視点で書かれていること、各テーマ毎の歴史の流れやストーリーがわかるので、非常に楽しみながら読んでいます。
その中でも、この刊は最も興味深く、読んでいてたいへん引き込まれる内容でした。
ロシア史に触れるのが殆ど初めてだったということもありますが、歴史というよりは生の人間ドラマを見ているような王朝絵巻が展開します。
高校生の頃、世界史の先生が「科目としては面白くないけど、世界史を好きになるには教科書ではなく、自分の好きな時代、地域の物語を見つけることだ。」と、いつも言っていたのを思い出しました。
ロマノフ王朝の翳りは、日本歴史の「高揚」と没落そのもの
★★★★☆
ロマノフ王朝の盛衰を語る通史としては、近現代への目配せがよく啓蒙書としてベストの本。
ラストエンペラー、ニコライ2世が遭遇する大津事件から始められる第8章、そしてレーニンの亡命先からの帰還後の激動が描かれる第9章から読み始めるのも一興かと愚考する。
このあたりの推移は日本史とも密接するものであり、受験生にも大いに勧められると思われる。こういうところの面白さを感得できれば、エドマンド・ウィルソンの名著『フィンランド駅へ』やドイッチャーの『トロツキー伝』などもすこぶるつきの楽しい読書となろう。
この著者のものは始めて読んだが、亀山郁夫など文学関係だけでなく日本のロシア研究者はレベルが高い!!
本書の主旨とは違うため異質になるが、文化・芸術系の補足としては、千葉潤『ショスタコーヴィチ』(音楽之友社)がオススメ。
よく書けたロシア通史
★★★★☆
ロシアは西欧からみると何から何まで不思議な国で,その歴史を知りたいと思っていた.この本は意外に新しいロシアと言う国の歴史を要領よく理解させてくれる.歴史は浅いが,宗教的には Constantinople 陥落(1453)以後にその伝統を取り入れた古い国であるらしい.この本は,文章がしっかりしているのが長所で,時に文化史,経済史が不十分な所もあるが,それは致命的ではない.ロシア音楽のファンとしても極めて役に立つ,手ごろで読みやすい歴史書として推薦する.
ロマノフ王朝を中心に巨大な国家築いた人々の歴史をたどる
★★★★★
ロマノフ王朝を軸に、ロシアという巨大な民族・国家の興亡を描く通史。
ヨーロッパとアジアとのはざまという地域で、ビザンツ帝国やモンゴルなどの様々な民族の影響を受けながら、一未開国家から世界最大の領土を獲得し、現代では米ソ対立の一方陣営の中心となるまでいかにしてロシアは巨大国家となったか。特にロマノフ王朝の歴史を彩る個性豊かな皇帝たちや、ナポレオンとの対決、中央アジア・シベリアの征服など、その壮大なスケールで展開する歴史は興味をそそってやまない。すぐ日本海の向こうにある隣国の歴史を知ることは必ずや有益なことであろう。
地図や写真も多く、年表、主要人物略伝もつけられている。