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アラブが見た十字軍 (ちくま学芸文庫)

価格: ¥1,620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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野蛮な西欧、グダグダなイスラム、それは現代も ★★★★★
高校で社会の科目を選択するときにいろいろ悩んだ
倫理は興味ない、政経は自分でできる、日本史は細かい
世界史と地理で迷ったんだけど母者の一言「世界史は今に続いているから」
まさに世界史がそのまま今に続いていると思わざるを得ない本である
この本は西方から蛮族のフランクに蹂躙されるムスリムとその他大勢
そして一枚岩になれないグダグダなイスラムの諸侯たち
レバノンはベイルート出身のジャーナリストである著者が悲惨な戦乱の世を同時代の目で著述していく
実はこの本の本当の論点は最後の章にある
フランクは野蛮ではあったが権力構造や制度面で優れているところもあった
そして西欧はイスラムの優れた科学や文化を学んで吸収していった
攻め込まれたイスラムは西欧の制度を学ぼうとはしなかった
そしてイスラムは西欧に競り負けていくようにあるのであろう
十字軍=DQNというのは世界史を履修していれば常識であろうが
受けて立ったイスラム側の混乱とその後の衰退というのは非常に勉強になった
ベイルート出身の著者からすればレバノンの内戦のグダグダも同じに映ったんだろう
そういう意味では本書は十字軍時代の本でありながら現代の中東情勢の本でもあるのだ
差は歴然・・・ ★★★★☆
西側の十字軍が1099年7月、エルサレムを陥落させた後、彼らがそこの「聖地」で「何」をしたのかは高校の「世界史」では詳しく学ぶ機会はなかったが、・・・この「アラブ」側から見た本は詳しく教えてくれている・・・非戦闘員である住民を虐殺(7万人以上)ユダヤ人は彼らの教会であるシナゴーグでまとめて焼き殺され、東方教会の宗教的遺物も強奪、司祭も拷問にかけ虐殺・・・彼らの言う所の「聖戦」など微塵も存在しなかった事が良く解る・・・
 翻ってイスラム側からの「ジハード」はどうであったか?1187年10月サラディンにより約100年振りに解放された「聖地」では、フランクであろうが中東の人間であろうが、キリスト教徒に対しては、殺人も略奪も行われなかったという・・・ この事は何を意味するか?私達は良く考えなければならないと思う・・・
十字軍はアラブ世界にとって「レイプ」であった。 ★★★★★
ヒズボラとイスラエルがやっと停戦した。
しかし今度はイランとイスラエルの衝突が取りざたされている。
なぜ中東には戦争が絶えないのか。
さかのぼれば、12世紀の十字軍遠征にその元凶があるという。

新聞の日曜面に書評があったので、
昨今の中東情勢について興味があったことも手伝って
手にとって見た。

著者のアミン・マアルーフ氏はレバノン在住の著名なジャーナリスト。
日本でいえば朝日や読売の社説を書くような立場の人らしい。

1096年のフランク軍(=十字軍)来襲から1291年の完全撃退まで、
約200年間にわたってアラブ世界とヨーロッパとの戦いがあった。
本書はその200年を物語風に描いた「史談」である。

物語としての面白さと、歴史としての重厚さのバランスが適当で、
500ページ近い大部であるが、ちっとも飽きさせない。
まるで小説でも読むように、一気に読んでしまった。

11世紀末から13世紀末といえば、日本では平安から鎌倉へ、
公家から武家への政権交代が起きようとしていた時期である。
現代の日本にその当時の対立の影響が残っているとはとても思えないが、
アラブ地域の現在の紛争は、たしかに1000年前の紛争と地続きである。
アラブの歴史は未だに「歴史」ではなく「今」なのである。

ムスリムといっても一枚岩ではない。
アラブ、トルコ、イランの三民族の間の抗争がある。
加えてヨーロッパの軍事介入が事態をさらに複雑にさせる。
現代ではそこにアメリカも加わった。

アラブ世界の難しさを民族感情レベルで理解できる好著である。
歴史書にもファンブックにも ★★★★★
本書はアラブ世界の視点で十字軍の侵攻から後の反攻、
さらにサラディンという歴史的英雄の登場を活写しているわけだが、
これらの推移をふまえつつ現代アラブ世界と欧米諸国の
対立が抱える問題にまで挑戦的に言及しているのは興味深い。

高校の世界史の教科書では、ほんの数ページ、
それもヨーロッパ側の見方でしかない内容だった十字軍史が、
アラブ側から見ることにより、より多面的に、立体的に
当時の人々が何を考えていたのかがよくわかる。

もともとハードカバーで売られていたものだけに、ページ数と値段は結構なボリュームだが、
手に入れる事も至難だった時期を考えれば非常にありがたい。
しかも単なる歴史の羅列を記したものではなく、物語としての表現も軽妙かつ秀逸なので
ちょっと普通の歴史小説は飽きた……という人は大いにのめり込むだろう。

大学で史学を専攻したいと思っている高校生にぜひ薦めたい作品だ。

ちなみに本書は知る人ぞ知る有名なファンタジー小説、
「アルスラーン戦記」の参考資料にも使われており、
ファンなら登場する固有名詞にニヤリとする事も多々ある。

イスラム世界から見た十字軍の時代 ★★★★★
中世ヨーロッパ世界による聖地回復のための十字軍。
後のルネサンスから近代への発展へとつながっていく契機ともなった重要な歴史的事件であり、今でも「異教徒との戦い」に「十字軍」の名称が使われるくらい、ヨーロッパの精神史に大きな痕跡を残している。

日本における十字軍の受容はおもに西洋発のものであった。
学校の世界史の授業でも西洋からの視点で十字軍について教えられている。つまり加害者からの視点である。この書は被害者であるイスラム世界側の視点から描かれているという点で興味深い書である。

この書には西洋における十字軍の事情はほとんど語られない。
十字軍の提唱者であるウルバヌス2世の名はほんの一部、他の十字軍に関する書でよく取り上げられるフリードリヒ・バルバロッサやリチャード1世もわずかにしかでこない。この書で登場する西洋人はサンジル・ゴドフロワ・ボエモンといった実際に従軍し、現地に王国を築いた騎士たちの名である。

そして当時の中東情勢のおいて十字軍がどれほどの影響を持っていたかも知ることが出来る。乱立気味の東イスラム世界において十字軍は大きなインパクトであったことは確かだが、イスラム諸侯が一致団結して十字軍と戦うことは殆どない。イスラム諸侯間での集合離散、場合によっては十字軍勢力と結んで他の諸侯と戦う姿はこれまでの十字軍とイスラムの戦いのイメージを覆すものである。

十字軍というとどうもイメージ先行だった嫌いがある。
この書で当時のイスラム世界の情勢というものを知ることが出来た。
ジハードの戦闘的側面は近代において強調されるようになったというが、確かに十字軍時代には宗教的に強い動機を持つジハードが行われたわけではないようだ。

最期に題名の「アラブが見た」というのは内容を正確に表していないように思う。なぜなら、この時代・地域に登場する人々の多くはトルコ人・クルド人といった非アラブのムスリム勢力だからである。