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銭湯の女神

価格: ¥127
カテゴリ: 単行本
ブランド: 文藝春秋
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   中国への返還をはさむ2年間の香港暮らしののち、著者は生まれ故郷の東京へと戻る。異文化からの帰還はこれが2度目である。前回はすぐに日本の日常生活に復帰できたのに、今回は違う。何か居心地の悪さを感じてしまう。

   本書は、そんな著者の違和感を、銭湯とファミリーレストランを回遊しながら透視した39篇のエッセイである。ほかにも、100円ショップ、ゴミ出し問題、銭湯などの身近な事柄を低い目線で取り上げているが、そのいずれもが読みごたえのある消費社会批評になっている。

   星野の批評の基軸になっているのは、香港的リアリズムだ。「一夜にして一家の財産が泡と消えた」り、「生まれた場所を追われた」経験をもつ人々が暮らす都市の日常と思考が、身体に染みついている。香港で暮らすことは、一種サバイバルに近い。苛酷な資本主義社会を生きることを余儀なくされるのだ。それを経験してきた人間には「日本の資本主義社会」は甘えているとしか見えない。

   本書で、星野は「プロセス」にこだわっている。それは、何かを手にするまでの苦労や努力のことだ。インターネットで楽々と情報を得てそれでよしとする態度、どうやったら手っ取り早くフリーランスの写真家になれるかを聞いてくる若者。そんな彼らに彼女は言う、「何かを手に入れるためには何かを手放さなくてはならない。簡単に手に入るものに、重要なものは何もない」。そんな星野を愚直と言う人がいるかもしれない。しかし、それこそ日本人がいま必要としているものなのではないかと彼女は静かに訴えているのだ。(文月 達)

現代の孤独 ★★★★★
 2001年に出た単行本の文庫化。
 39編のエッセイが収められている。内容はきわめて雑多で、銭湯、ファミレス、香港、船会社での仕事、歴史教育、横断、携帯電話、うどんなど。
 しかし、いい文章を書く人だ。読みやすく、温かく、自分自身をネタにするユーモアも面白い。そしてなにより、現代日本への透徹した視線が印象的だ。上滑りの文明論でもなく、さかしげな若者批判でもなく、自分自身の目で見た「現代日本の抱える問題と、その原因」がクッキリと、心打つように描き出されているのだ。
 読み終わって、どこか悲しい。
銭湯の本ではないので、ご注意。
本格的エッセイ ★★★★★
東京生活を描いたエッセイ集。香港生活体験が話に厚みをくわえています。
爆笑ものエッセイありで楽しいです。なかなかいい「落ち」が最後の
一行にはいっていて、関西人もうなってしまううまさがあります。
一方、人と人との会話なしの、いわゆる都会文化に恐怖を感じるような深刻な話もあります。
いわゆる”おたかくとまった”ご見解(関西弁でいちびった)エッセイではなく
生活の現場そのものから”丁寧に練られた”エッセイで、読んでいて楽しく
著者のほかの作品も読みたくなります。挿絵の写真もすばらしいです(3枚だけ
ではものたりない。もっと見たいなあ。)
読んでいて誠実さと人間的スケールの大きさがつたわってきます。
私はすっかりファンになりました。



あれ? ★★★☆☆
「転がる香港〜」はとっても良かったが、何故か日本に戻ってきて身辺雑記を書き始める
と肩に力が入りすぎ、という印象。道徳の教科書かケーモー系論壇誌のようだ。
もう少し気楽に楽しい内容のほうがエッセーらしいと思うが・・・。
誠実で等身大で真面目であることの素晴らしさ ★★★★☆
~一読して、まず感じたのは、年相応で等身大の、誠実な文章だなあということでした。
長い海外旅行や人生経験のなかで感じたこと、思ったことを、友人のくちから直接きいているような気分になることがあって、それが私には嬉しかったし、気持ちよかったです。
信頼できそうな友人の、まっすぐで心のこもった信用に足る話。それを酒でも飲みながら聞いている~~ような気分。
はっきりいって「おい、それは違うだろ」とツッコミを入れたくなるような部分もあったし、こんなことをいうのは、じつにじつにまことにすいませんが、年上のオヤジの私の目には「若いなあ」と思うところも、多々あった。もちろん、「すばらしいなあ、かなわないなあ」と感心するところも、あった。しかし書き手の未熟さも成熟した部分もふくめ~~て、「ありのまま」の等身大の著者が、そのまま本のなかで息づいているのが、とっても素晴らしい。
器用じゃなくて、よかったね。文章のテクが先行しなくて、よかったね。いや、皮肉じゃなくて、ほんとうに。
たくさん損をしたり失敗したりしながらも、うんざりするほどの回り道をしながらも、まっすぐに生きようとしているひとは、素晴らしいなあ。そして~~それを一生懸命に書いて、表現して、それがこういう本にまとまっているのは、素晴らしいなあと思いました。~
ほんわか鋭いエッセイ ★★★★★
めくるめくる日常の中で、私たちがさらりと流してしまいそうなことを
きっちりと鋭くとらえている。でも好感が持てるんです。
ああ、そういう考え方があるんだ。そうだよなぁ。
著者が素直な気分を書き綴っている分、こちらも素直に受け取れます。
彼女の人に対する視線は本当の意味で暖かい。

世に日常をつらつらと綴るエッセイは数あるけれども

これだけ普遍的なメッセージを持つものはそう無いと思います。
生きていくことの大変さと楽しさ、両方を教えてくれるようです。
オーバーかな。私はそう感じました。

女友達にも男友達にも薦めたいそんな本です。