国家の枠を越えた視点でなければ見えてこないもの
★★★★★
第1巻の上記内容解説にある「カーペット」という用語は本巻で出て来るものである。普通家系図はファミリー・ツリーと言うがロスチャイルド家のそれは「ファミリー・カーペット」と呼ぶ方が適切なようなものを知らず知らずのうちに、いや彼ら自身には多分その強い自覚があるのだろう、そうとしか考えられないようなものが今の世界政治、世界経済、世界産業のなかに形成されている、と。
また、次のようにも言う。
「善人たちで埋めつくされた大富豪一族のなかで、ほんの時たま、特に金に執着する者が、さらに金を求めて豪華な寝台の所有者を物色する。そのため、家系図はその部分に集中して無数のファミリーが寄り合い、貪欲に獲物を丸飲みした大蛇のように、系図がその部分で太くなるのである」(1151頁)
そして、歴史研究における家系研究の不備を断じ企業ファミリーの精緻な研究が今後不可欠だという結論に達している。これは、本書を書ける人だけが言えることだろうし、決して問題がロスチャイルド家だけのものではない、社会の中における人間一般の在り方と不可抗力の部分、自覚的なら克服できるだろう部分を再検討させてくれるだろう。近代以降、「国境という人工的な線が引かれ、互いに資料がそこで消滅してしまう」ことが起こったことによって、歴史はより精密になったかに見えるにも関わらずまだ理解されていない部分があるのだということを。
東ヨーロッパの民衆を貧困の極に追いやったのは西ヨーロッパの商人
★★★★★
「攻撃して、相手を倒すことによって財産をせしめなくともよい。近親結婚をくり返すことによって、
分散していたオート・バンクの資産は一ヵ所に向かって集中してゆき、かなうもののない一家族に集中する。」
「思想書など何百冊読んでも頭はよくならない。家系図を描いて、そこに利権を書き込んでゆくと、ほとんどの悪事の答が浮かびあがる」
サロー仏首相と独裁者スターリンの驚くべき近親婚。
「系図45を調べてみると、もはやこの世のすべてが信じられなくなるのは、筆者だけであろうか」
スターリン第3夫人(Rosa Kaganovich) の実弟(Nicolas Kagan セリグマン銀行オーナー)
|
妻(Simone Sarraut) の実父(Maurice Sarraut=仏首相アルベール・サロー(Albert Sarraut)の実兄)
=「"共産主義者"と"大資本家"の連携プレー」on「餓死の農民と血を吐くような石油労働者」
ウクライナの穀物、バクーの油田 ⇒ ルイ=ドレフュス商会、フランス石油
「従来の歴史は、政治家と軍人だけを調べて断罪し、(最大の利益を懐にしてきた)商人と銀行家を野放しにしてきた」
「ジスカールデスタン大統領と、その反対勢力ミッテラン大統領」が「きわめて近い親族」であるという「全世界で誰ひとり指摘したことのない事実関係(系図50)」
「ミッテランは大統領選挙で「核実験をやめ、兵器輸出を控え、原子力発電をおこなわない」と公約して当選し、
その後はジスカールデスタン以上に核実験、原子力、兵器輸出に没頭してきた。これで国民を裏切ったことになっているが、
系図さえ知っていれば、裏切りではなく、初めから決まっていたシナリオであった」
知的好奇心を充たす経済史
★★★★★
国家とは、経済とは、戦争とは何か、本書を読破した時、歴史の真実の一端が理解出来るかもしれない、フリーメーソンに代表されるユダヤ陰謀史観のトラップに陥ると彼らの本質は掴めない、知る事こそ唯一の防御である