私達が背負っているもの
★★★★☆
これまでのコラム集「背後にある思考」、「なぜ怒らないのか」に続き、
信濃毎日新聞に掲載された野田氏のコラム集です。
例えば、本書のタイトルにもなっている政治については、歌舞伎役者のように
「見得」を切ることにのみ長けた首相や知事などが、私達の生活を変えてしまったが、
例えば、医療制度改革の基本方針には「安心・信頼の医療の確保と予防の重視」
とあるが、何故「医療費抑制と患者自己負担をめざして」と敏感に感じ取らないのか、
と私達に問いかけます。
つまりは、安全は政府行政が目標としてもよいが、安心は上から保証されたり
要求されたりするものではないのだと私達は知るべきではないのか、そこを鋭く
私達に突きつけてきます。
あとがきにもあるように、「その地、その問題に身をおき、あるいはそこに生きて
いるとして考え、誤っていたとき、はっきりと誤っていたと自覚できるような文章を」
書くように心がけたというそのコラムは、実際にその場所を訪れて相手と対峙して
著されているものが多く、私達が今どんなことが世の中で起きていて、何が大切な
ポイントかを考える際の総合的な思考を養う糧となると思います。
特に教育、戦争責任、医療、政治、マスコミを中心に深い洞察を元に厳しく追及する
コラムを、著者がアジアを中心に旅をする途中の風景を読み込んだ文章などが
時折それを和らげるかのように収録されています。