忘れられた勇者たち
★★★☆☆
ヒマラヤが特権階級のおぼっちゃまたちの手を離れて町の山岳会の活躍の場となり、金ではなく実力によって次々とバリエーションルートが開かれていったあの時代。本書に登場する今はもう忘れられた男たちこそ、日本の登山界を世界に知らしめた真の勇者たちである。
肝心の人物像が描かれていない
★★★☆☆
登山という究極の世界にのめりこむ男たちというのは、大抵どこか一癖(自暴自棄とまではいかないが、どこか現実社会を見据えていないところもある)があり尖っているものだが、山田昇という人物はそれとは裏腹に温厚で誰からも好かれるタイプであったらしい。
そのことは、本書を手にしていてもひしひしと伝わってくる。
8000m級制覇野望の途上で、やはり他の多くの登山家と同様、登山事故であっけない人生の結末を迎えてしまう。
山田昇自身よりも彼の周辺の人物が述べられており、本人に関する記述が少ないく、いまいち彼のイメージが伝わってこなかったのが残念ではあった。
彼自身、筆不精で著書をはじめ登山記らしい登山記というものを残していないため、なお更なのかもしれないが。
成功しないと駄目なのか
★★★☆☆
1990年に東京新聞出版局から出た単行本の文庫化。
日本を代表する登山家であった山田昇の生涯を描いたもので、第一回スポーツライター賞(ノンフィクション部門)を受賞しているらしい。正直、それほど優れた作品とは思えなかったのだが…。
山田昇は世界に14座ある8000メートル峰のうち、9座までを征服したことで知られている。本書は友人や関係者へのインタビューをもとに、山田の登山歴を再構成していったもので、なかなか迫力がある。重点が置かれているのは山田の人間的魅力。すごく良い人だったらしい。しかし、この点はもうひとつ良く伝わってこなかった。
山田は8000メートル峰全制覇を成し遂げることなく遭難死してしまう。その虚しさはいかほどだろうか。
著者にはロッククライマーを扱った作品が幾つもあり、会わせて読むと面白い。登場人物や事件が次々とつながってきて、日本の岩登りの世界をのぞきこむことが出来る。
著者の無念さがひしひしと伝わる名著
★★★★★
ヒマラヤに通うアルピニストというと、狷介なイメージがつい先だってしまいますが、著者は、そんなアルピニストとはまったく違う、山にいるときの人のふれあいを大切にした、愛すべき山田昇を「岳人」に連載する矢先に、マッキンレーで失いました。
山田昇の「人となり」は、著者の綿密な取材により、見事によみがえっており、本人に会ったことのない私でさえ、マッキンレーでの遭難死を無念と思わせる名著です。
山田昇の履歴
★★☆☆☆
山田昇の履歴のような感じで人物を連想しにくい感じでした。山田昇の友人について多くかかれていますが、山田昇には余り触れていません。