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The Tale of the Unknown Island

価格: ¥1,413
カテゴリ: ハードカバー
ブランド: Harcourt
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 「ある男が王様のところへ出かけていき、扉をたたいて言った。『舟を1そうください』」

 「むかしむかし、あるところに…」の文字がなくとも、ジョゼ・サラマーゴの遊び心と知恵にあふれるこの物語(邦題『見知らぬ島への扉』)の最初の1文を見ただけですぐ、読者はちょっと変わったおとぎ話の世界に入り込んだことに気づく。もちろん、サラマーゴの作品は、形こそさまざまだが、どれもおとぎ話だといえる。奇抜で修正社会主義的な『History of the Siege of Lisbon』もそうだし、暗黒郷を描く陰鬱(いんうつ)な『Blindness』(邦題『白の闇』)も例外ではない。

   サラマーゴといえば、ドライなウィット、一見シンプルでありながら何重にも効果を発揮するプロット、特異な句読点の打ち方などが有名だが、初めはポルトガルで短編小説として出版されたこの作品も、そうした特徴すべてを持ち合わせている。この作品は、官僚主義のばかばかしさに対する風刺物語として始まる。人々は王様の「願いの扉」を訪れるが、王様自身は「好意の扉」の近くで待っているのだ。

王様はいつもいつも、「好意の扉」のそばに座っていた(おわかりだろうか、「好意」とは、人々が王様に表明する「好意」のことだ)ので、誰かが「願いの扉」をたたいても聞こえないふりをしてばかりで、それでも青銅のノッカーの音が絶え間なく続き、ただ単にやかましいだけでなく、明らかに悪い噂のもととなるほど周りの住人の平和をかき乱して(ノックに応じないなんて、なんてひどい王様なんだ、と人々が文句を言い出しそうになって)初めて、嘆願者が何を求めているのか聞いてくるようにと第一臣下に命じるのだが、それは、そうするよりほかに、嘆願者を鎮めるすべはなさそうだからだった。

   そんなあるとき、扉の前の男が、見知らぬ島を探しにいくための舟がほしいと言う。王様は、島という島はすべて発見済みだと言いきるが、男は断固として信じない。男が、見知らぬ島は「絶対にある」と言うのは、「見知らぬ島がただのひとつもないなんてあり得ない」という単純な理由からだった。この会話を立ち聞きしていた宮殿の掃除女は、王様がようやく男に舟を与えると、「決心の扉」から王宮を抜け出して、探検家をめざすこの男の後を追う。このあと、夢を追う2人が発見の航海に出る準備を整える段になって、サラマーゴは風刺物語を寓意物語に一転させる(そして、夢追い人たちは、木を見て森を見失いそうになる)。

 『The Tale of the Unknown Island』は、わずか50ページの中に、たいていの小説が5倍のページ数を使ってもかなわないほどたくさんの魅力と意味を詰め込んでいる。ノーベル賞受賞作家、サラマーゴをすでによく知っている読者は、以前に読んだ、この作家のもっと長い作品の魅力のすべてが、ここにも短縮された形ですべて含まれていることに気づくに違いない。サラマーゴの驚くべき想像力に触れる喜びが初体験の読者にとっては、魅力あふれる最初の1冊となることだろう。(Alix Wilber, Amazon.com)