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あらゆる名前

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 彩流社
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ジョゼ・サラマーゴの作品 ★★★★★
フランツ・カフカならば短編「掟の前で」で扱ったテーマが「審判」「城」と長編化して続いていくのであるが、ジョゼ・サラマーゴの場合は「見知らぬ島への扉」という短編で描かれた探求心・それに対する色々な障害・どんでん返しの顛末を長編化したのがこの「あらゆる名前」のように感じる痛快な作品。主人公がやっと探し当てたと思った墓地で墓守の語る意外な真実に、作者ジョザ氏の奥深いユーモアと実存主義的な視点とセンスを感じて面白いシーンだと思った。さりげなく色んな寓意がこめれれている。
ジョゼサラマーゴは、石の筏(イベリア半島が地殻変動で大西洋のまん中に移動、社会パニックを描写)とか修道院回想録(魔術で飛ぶ飛行機械の話、残酷な大衆心理を描写)とか、最近映画化で話題の「白の闇」などSF的な話や社会パニックまで読み応えがある作品が多く、この作品を読んだ後で、「あらゆる名前」を手にとって読むと人間の狂気に対する作者の鋭い感性を改めて感じるのではないだろうか。
まだ邦訳されていないが、ジョザサラマーゴ氏の短編集で家来を皆殺しにする王様の寓話があり短編集も邦訳化されれば、もっとこの作者の凄さが理解できるのではないかと思うのである。
あらゆる名前が ★★★★☆
 あらゆる名前が、デジタル情報として目の前を無機質に流れる現代、主人公と我々は、同じような立場に置かれている。
 ルーティン・ワークをただ真面目にこなす主人公のちょっとした好奇心が、物語を日常から非日常へと変え、物語は大きく転換していく・・・
 いつもの呼び名、戸籍上の私達の名前、戒名等々・・・名前と個性、そして、個人の尊厳を改めて考えさせらます。 
 復刊してほしい一冊。
ノーベル賞作家の異色作。 ★★★★★
サラマーゴ独特の語り口で不思議な世界が描かれる。登場人物は皆名前がないのは代表作「白の闇」と同じである。
カフカを思わせる魂の寓話。日本ではサラマーゴはそれほど有名ではないのだが、隠れた(?)名著であるので、気になった人には是非読んでほしい。
60代からの作家活動 ★★★★★
この作家のすごいところは60を過ぎてから作家活動をしているというところだ。しかもノーベル賞までもらっている。この「あらゆる名前」にしてもこの作家のスタイリッシュかつパワフルな文体で公務員という普通の人間の普通でない日常がえがかれている。基本的にはずれの無い作家ではあるが、彼の作品の中でも異色の作品の部類に入るのでは? 
何のために生きているのだろう? ★★★★★
「ポルトガルのストーカーってこうなのかしら?」と思ってしまうような話だった。でもそんなことを言ってはいけない。これは小説であって寓話なのだから。この話がストーカーの話だと考えるのは、イソップ物語を読んで、古代ギリシャではキツネが言葉をしゃべったのだと思うようなものかもしれない。(ちょっと極端な例かしら?)

この小説は、戸籍管理局に勤める中年の独身男性「ジョゼ氏」が、見知らぬ女性を探し求めていく話。彼は、さまざまな有名人の新聞、雑誌の切り抜きを集めるのを趣味としているのだが、その切り抜きと一緒にほんものの出生届も加えられれば立派なコレクションになる、と思い立って戸籍管理局に忍び込んで書類を持ち出してくる。そのなかに、まったく無名の関係ない人の書類が紛れ込んでいた。ジョゼ氏はその彼女を知りたい衝動にかられ、探し求めていく...という話。けっきょく、コレクションの趣味などというのは、人生の時間をムダに過ごすためのものだ、と思わせながらも、ジョゼ氏がその「ムダなこと」によって体験する冒険や、そのときに感じる精神的葛藤などをとおして、「死」とはどういうことかを学んでゆく。人生はまったく意味がない、と見せかけておきながら実はそうでないということを示してくれているのではないか、と考えさせられた。

作者は1922年生まれというからもう78歳くらいだ。物語の中で「一階右側の女性」が50すぎのジョゼ氏に向かって、人は70をすぎてから少し賢くなるのよ、と言っているが、70を過ぎると世界はどのように見えるようになるのだろうか・・・。わたしはまだたった30年しか生きていないのでまだまだだ。