廃墟となったダーナムを出てクリスタルへ進軍するケイロニア軍を襲う怪異。さしもの勇猛を誇るケイロニア軍も魔道の前には無力で、今回はグィンもアモンの仕掛ける幻惑に惑わされる。

ヤンダルゾックが本伝のメインに出てきて以来、どうも“なんでもあり”の世界になっており、ストーリー内で登場人物たちがおかれる立場やストーリーの展開が、著しくバランスを欠いている印象が強い。スピード感に欠ける展開のため最近ではメインキャラの生死も何の感慨も生まなくなっている。

本巻で見るべきものはグィンと身を持ち崩した王妃シルヴィアとの会話シーン。このところ延々と続いているパロ遠征が一段落した後の波乱を予感させる。

全編に渡って、魔道によるおどろおどろしい戦いの様子が描かれています。タイトルにもある霧は、実は思いもしない意味があり、グインの心がずたずたにもてあそばれる場面が印象に残りました。

魔道色が強くなってくると、猥褻な場面も比例して増えてくるのが、読者としては、正視にたえないような気分になってくる。しかし、これも著者が人間の弱い部分や汚い部分を、読者にこれでもか、と見せようという意図があるのだと思いたい。

このところ、だらだらした記述が多くて嫌気がさしてたけど
今回は外伝なみの引き込まれ方で、おもしろい！

グインがはじめて自らを省みて　挫折を味わう巻になってます。
シルビアの独白も身につまされます。
冒険＋人間の感情の機微で　おもしろかった。

あとはグラチウスやユリウスも出てきますが
今回はご愛嬌な感じ。続きが楽しみです。

いよいよ次巻は　クリスタル突入の模様です。

今回のようにグインがあからさまに「間違い」を
犯してしまうのは９０巻続いてきて、初めてじゃないだろうか。

ケイロニアにいったん破滅をもたらすに至った「売国妃」シルウィア。
そして、ケイロニアを見捨てた「豹頭王」グイン。
これら後半の伏線になってゆくのか。

最近はいろいろいわれてるけど、やっぱり面白いです、グインサーガ。