町医者の娘である主人公ケイティは、あたたかい家族と友だちに恵まれた、利発な少女だ。妹の誕生、水車小屋での火事、父に連れられて垣間見たアサイラム(保護施設)と呼ばれる無気味な建物。そして精神に障害を持っているが、動物好きの心やさしい少年ジェイコブとの交流。さまざまな体験をしながらも、その日常は笑いの絶えない平穏なものであった。そんなときジェイコブが起こしたある事件は、ケイティや町の人たちに深い傷を残すことになる。
ケイティを取り巻く社会は、不平と不条理に満ちている。たとえば、憧れていた隣家の恋人たちの生々しい情事や、メイドに聞かされた、農家では増えすぎた子猫を川に沈めにいくという話。初めて見聞きした大人の世界に、ケイティは戸惑いと不快感をおぼえる。一方、消えかかった子羊の命を必死で救おうとするジェイコブの存在は、大人たちが失ってしまった純粋さの象徴である。無垢な精神を持った少年を描くことにより、読者に向かって「正しいこと」とは何かを痛切に問いかけてくる。(砂塚洋美)
この本を読むと、自閉症の人達がどう感じ、それに対してどう処したらよいのかが、この父娘より学ぶことが出来る。各小学校に1冊は置いていて欲しい本である。