指導者について使うべき大学テキスト
★★★★☆
生成文法の入門書で、問題が豊富に収録されている。ただ、答えはないので、大学テキストとしての使用でない場合は、指導者につくか、答えを版元に求める必要がある(ただし、それが可能かどうかは調べていない)。
解説部分は160頁ほどしかなく、類書と比べるとかなり薄い。ただし、統語構造、変形規則、意味解釈規則についてひととおりのことが解説されており、最初に読む入門書としてじゅうぶん機能する。
また、解説自体も非常にわかりやすく、ポイントを絞って理解すべき情報を提示しているので、順番を追って納得しながら読む進むことができる。
ただし、用語については、全くの初心者への配慮がややなされていない気がする。
ある用語、たとえば「助動詞」が出てくるとすると、その次からはずっとその略語であるAuxが使われている。たしかに太字の「助動詞」のあとにかっこ書きで「auxiliary、略してAux」となっているのだが、次からずっとAuxが使われている。せめて「次からAuxと記述する」として、太字にしてくれれば気にとめることができるのだが、以下、略称一辺倒になる点は唐突に感じた。
たしかに最初の略語一覧がついているので「助動詞」くらいなら全く困らないが、SAI(主語-AUX倒置規則)などになると、その該当ページに戻らないとわからなくなってしまう。かといって略語一覧には解説されている該当のページはついておらず、索引にも載っていない。そのあたりまで配慮してくれれば本当に良い入門書だったのにとちょっと残念だ。
独学の場合は、大学テキストとして教師について使うか、最初から解説型の入門書を使ったほうがいいかもしれない。たいへんわかりやすい本だけに、構成上の不親切さがすこし残念だった。