企業倫理が問題視されたり、学校の崩壊、政治の腐敗が叫ばれる昨今であるが、社会を構成する最小単位である“家族”までもが崩壊している。と言うよりも、戦後社会において家族が崩壊に向けて進行したが故に、健全な子供が育たずに、社会人として、大人としての自覚のない人間が増殖し、それらが社会を構成しているのだから国全体が乱れた世相になるのも必然ともいえる。やたらと“自分らしさ”が強調され、個人の権利ばかりが尊重されるのだから、家長としての自覚、父親として、母親としての自覚、或いは子供としての自覚までもが喪失されている。全てではないにしても、そんな人間が会社の経営をしたり、学校の先生をしたり、政治家になったりしているのだから世の中滅茶苦茶である。
本書は少々時代の違いを感じる部分もあるが、しかし著者の主張は根本的な人間としてのあり方そのものなので、察すれば今失われている大事なものに気づく切欠となるのではないか。
何か意にそぐわぬ事があれば、何事も自分以外のものに原因を求めがちであるが、夫婦であれば相手が自分の鏡であり、親であれば子供自身が親の鏡である。全ての事象の起因を自分自身に立ち戻れば、物事の考え方も、その後の展開も良い方向に変わるのである。やはり父親は“父親らしく”、母親は“母親らしく”振る舞い、子供を“子供らしく”育て、そして強烈に家族の絆を感じたいものだ。そんな家族が増えれば健全な大人で社会が構成され、国家(国としての家族)も正常化に向かうだろう。