物語は1900年、フランスのソルボンヌ大学に学んだ数学者ルイ・バチャリエに始まる。それから、ポートフォリオ理論を開発したマルコビッツ、サミュエルソン、リーランドそしてもちろんブラック・ショールズなどの人々の業績と経歴・プロフィール・趣味が生き生きと語られている。私が一番面白かったのはバー・ローゼンバーグである。彼はシェイクスピア学者の息子として生まれ、バークレーで計量経済学の教官の職を得たが、彼が住居にしていたタグ・ボートが致命的な水漏れを起こしたため、ボート生活をあきらめて陸の上にすむことにした。そして転居の収入源とするためもあって投資のコンサルタントを始めたというものである。
投資理論の本には珍しく、オプション理論のブラックショールズ式を唯一の例外として数式が無い。著者は米国の投資関連の雑誌「ジャーナル・オブ・ポートフォリオマネジメント」の編集長を長年勤めた人物である。本書を読むと、自然科学的な観察眼を投資に冷静に適用しようとした数々の研究者の挑戦によって投資理論が生成されてきたことが理解できる。
最近、新書版の「ファイナンスとは」とか「金融工学とは」と題した本がたくさん出ていますが、それらを3冊読むくらいだったら、これを1冊読んだ方がよっぽど得るものが大きいと思います。過去に指導した学生の経験談からすると、就職活動などにも役立つ本だと思うので、非常にお勧めです。