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異人論―民俗社会の心性 (ちくま学芸文庫)

価格: ¥945
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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個々の話題や論考には見るべき点があるが、本として体系だってない点が惜しい ★★★☆☆
民族社会の中での「異人」観を伝説や昔話の分析を介して考察する事によって、民族社会の心性の解明を図った論考。本書で言う「異人」とは、定住民と非定期的に接する定住民以外の例えば座頭、山伏、巫女などの総称であって、厳格な定義では無い。

まず、異人に対するイメージとして両義性が採り上げられる。中心・周縁、日常・非日常、秩序・無秩序と言った対立項の事だが、異人と言えば後者のイメージが強い事は頷ける。更に「異人殺し」伝説のメカニズムが論じられるが、「異人殺し」が、民族社会を襲う災厄や病気等の"異常"に対する説明体系の一部として構成されていると言う。社会内部の特定家の盛衰も「異人の祟り」の発生理由とする。即ち、民族社会における「異人殺し」伝説の存在意義は社会内部の矛盾の辻褄合わせなのだ。原初、「異人=神」で崇拝・畏怖の対象だったものが、民族社会の都合で排除の対象に移行したとの論である。南洋の「ヴァギナ・デンタータ(鉄の歯を持つ膣)」説話を山姥やユングの「呑み込む太母」説と関連させて考察する過程は読み物としては面白いが、元々艶笑談なのでは。「「異人」としての女性」論は男性の心性の反映であろう。昔話「猿聟入」の論考は興味深く、そこで表出する人間の心性は"悪意"である。また、折口の「マレビト」を異郷からの「来訪神」と捉え、共同体の人々を祝福するために来訪すると考える。更に、時代と共に「神→鬼」に変容するものも出て来るとする。冒頭の論に近い。最後に「妖怪と異人」について、妖怪の異類異形性を中心に語られる。本分野の第一人者の論だけに興味深い。

本書は著者の小論文を纏めて本の体裁にした様だが、話題が散発的で、民族社会の心性と言うテーマに収斂していない気がする。個々の話題や論考には見るべき点があるのだから、元の論文を改稿してでも全体として体系だった本にして欲しかったと思う。
完璧 ★★★★★
「異人」とは「民俗社会の外部に住み、さまざまな機会を通じて定住民を接触する人々」として定義されている。
それは山伏であったり、巫女であったり、遍路であったり、旅の者であったり。
そしてこの「異人」は、いつの時代でも、歓待されもしたし、排除されもした。
中には殺され、大金を奪われる異人もいた。これがこの本のメインテーマの一つである「異人殺し」である。
またあとがきで筆者は異人と妖怪の関係について述べている。
「異人」は民俗社会にとっては社会関係上の「他者」であり、また「妖怪」は、人々の想像力によって産み出された「他者」である。一方は社会的存在であり、他方は想像的存在であるが、「異人」が人々の想像力を刺激し、それに「幻想化」という処理が施されると「妖怪」が生じる。例えば、「山伏」に幻想化が施された結果として「天狗」が生じている。
他にも「恐怖の存在としての女性像」など、興味深い話が複数収録されている良書。
事例がたくさん ★★★★★
論文の文体なので、なにかをはっきり云うまでに行数がかかるものの、論理的で明解な文章なので、難解さに泣くことなく、むしろ論理立てられた筋道を痛快に感じて読了できると思う。
テクスト論などを使って、民俗学としてどう進むべきか、民俗学の方向を向いた抽象的な章もある。人はなぜものがたるか、人はどう語りを聞くかにまでつながって、深いと思った。
一方で、具体的な事例(採録した昔話や伝説)が豊富で、生々しい「各論」を読んでいるだけでも、おもしろい。
巡礼坂。比丘尼塚。七人塚。琵琶淵。座頭池。
そうした地名の由来を伝える伝説が、どう変容していくかなども踏まえ、民俗学がこれまで無視してきた「悪意」「殺意」を見据えていく。
異人の歓待、異人の虐待、異人の殺害。
山姥。折口の云うマレビトの再考。猿婿入。河童。
類話を豊富に収集したからこそ、云えることだと思う。民俗学の論理的科学的な側面にようやく触れられた気がした。稀に出会う良書と思う。
異人はマレビト?妖怪? ★★★★★
異人とは、何か。現代の人は異人という言葉を外国人か何かだと思いがちだが、実はそれだけの意味ではない。豊富な民話の中から事例を抜き出し、それを分析する著者の恐るべき慧眼。実際この本が出されてからというもの、「異人」論が多数出版されてきた。それだけこの本は影響力があったのだ。しかし、異人殺しなどの観点から見ているため、この著者お得意の妖怪論にまで発展している。おどろおどろしい怪異が垣間見える世界への分析は溜飲が下がる。異人さんが~♪という歌の一節の意味が分かると、恐ろしい歌だったと気が付く筈である。
呪?祝? ★★★★★
むかしむかし、ある村に宿をたのむ者がいました。
村の長者はその夜、その旅人をこころよく迎え歓迎します。
さて朝になってみると、旅人の姿はどこにもない。
どうしたことだろうと探してみると、
旅人の寝ていた布団に黄金の山がありました。
なんと旅人が金に変わったのでした。

そんな昔話があります。どうして旅人は黄金に変わったのでしょうか?

本当に黄金に変わったのでしょうか?
いまでも、各地に「七人塚」と呼ばれるものがあります。
そこを掘ったり崩したりすると祟りがあるという。
各地に語り継がれている、このような伝承をもとに、
闇の民俗社会の心性を明らかにしていく分析はみごとです。