問題点の確認
★★★☆☆
福祉国家の衰退が問題視されて久しい。そして、福祉国家の立て直しのためには、その前提として、社会的連帯の感情が求められよう。社会的連帯の意識を再構築するために「ナショナリズム」への関心が、従来では「リベラル」とみなされてきた論者のあいだにも顕著になってきた。本書は「ナショナリズムなき社会統合」の可能性を追求する論者たちによる論文集である。
政治学、憲法学、社会学などの立場から件の課題が論じられるのだが、いかんせん、明確な処方箋が示されることはなく、さまざまなテクストの引用・紹介と問題点の確認にとどまっている。取り扱っている問題が難しいものであるのは私としても重々承知しているつもりだが、なんとも煮え切らない文章をたくさん読まされて、ややうんざりしている。自分で考えろということか。