当時の生き残りの日本兵への取材などもないままにロシアの戦闘機は圧倒的な性能で日本のパイロットは太刀打ちできなかったとか、勝手な解釈による迫撃砲の攻撃力指数なるものを作り出し、それを論拠にするなどはその際たるものである。 まったく旧軍に関係のない私でも当時の陸軍を弁護したい気にさせる内容である。
他のノモンハン戦を扱った書籍ではあまり言及していない当時の軍隊組織の人数や砲の数を解説している点ので、ノモンハン戦を理解するガイドブックとして役に立つ。残念なのはその数字のいくつかに明らかな誤字があることだ。
著者が言う「矮性」は、日本の経済基盤に原因を求めた方がいいと思うので、私としてはは納得しがたい。しかし、ソ連が短期間のうちに自軍の欠陥を修正したのに対し、日本軍が何の手も打たずに、同じ失敗を繰り返したことや、一つの目標に複数の組織が協力できないことについては、私も同感だ。
最終章のシドニーでの日本野球チームの例を見ると、日本人がノモンハンの失敗をいまだに繰り返しているように思える。しかし、いち早く審判にビデオを導入している大相撲や、強くなった日本サッカーや、発展を続けるK-1、PRIDEなどを見ると、組織によっては、ノモンハンの失敗を克服している所もあると思う。
今後は、ノモンハンの失敗を繰り返す組織と、克服した組織に大きく分化していき、前者が滅び、自然淘汰されていくのではないだろうか。