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飢餓同盟 (新潮文庫)

価格: ¥515
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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人間社会の理想と限界を鋭く映し出した秀作 ★★★★☆
「壁」、「箱男」等のように寓話性を前面に出さず、物語中に風刺・寓意を散りばめるタイプの作品。舞台は寂れたかつての温泉街の花園町。キャラメル工場主任の花井は新聞社社長重宗、開業医藤野の娘"うるわし"等と共に"ひもじい"同盟を結成している。同盟の目的は伏せられたまま物語は進行する。

その代わり、安倍氏の作品としては登場人物とその関係が多彩。町に招かれた医師の森は診療所も与えられないまま一ヶ月間患者がおらず、患者に"飢えている"。"分離電極法"と言う温泉復活法を携えて故郷に錦を飾ろうと20年振りに戻って来た地下探査技師の織木は、その軍事目的への転用を迫られ、恐怖と絶望のため魂の"飢餓状態"に陥り、自殺未遂をする。その遺書は花井にも衝撃を与えた。"ひもじい"様とは、飢餓除けの神様らしい。花井の姉里子は織木のかつての恋人であり、"うるわし"の叔父の幸福に陵辱され死んだ。花井にシッポがある事も明かされている。精神に欠乏感を持った人々を象徴的に描こうとしているように見えるが(「壁」にも通じるテーマ)、ストーリーが何処に向かっているかは不明のまま。

"ひもじい"同盟(改名して「飢餓同盟」)はどうやら労働者革命組織なのだが、花井は織木の"分離電極法"を用いて温泉を復活させ発電会社を興し、社長の座に座ろうと企てる。手厳しい皮肉である。更に花井は、現在行なわれている町会議員の補欠選挙を通じて、資本家どうしの争いを批判するが、返す刀で共産党も批判する。「全ての思想を否定するが、自らの主観は尊重する」花井の姿は滑稽であり風刺が効いている。

歯車が狂い出した花井のユートピア革命の行方は...。寒村でのプチ革命の顛末を通して、人間社会の理想と限界を鋭く映し出した秀作。
ニュー飢餓同盟? ★★★★★
「旧版新潮文庫」や「新潮社の安部公房全作品3」とはところどころ表現方法や内容が違う。著者が加筆したのかしら?何処が違うか探しながら読むのもまた一興。
最初に読むなら『箱男』 ★★★★☆
面白いけどちょっと難しいので、初めての安部公房なら、私は断然『箱男』をプッシュします。
冗談のような ★★★★★
飢餓同盟の人々は、何かに飢えている。
それは名誉だったり、命だったり、お金だったり、あまりにも人間的な代物ばかり。
自分の欲望のはけ口を、他者への憎悪に向ける。
これもまたあまりに人間らしい。

「革命」という、こっけいな夢物語を、さらに食らう形で乗っ取る村の人間たち。
いつの時代も、飢える人々はますます飢えて、食らうものはさらに肥え太る。
冗談のような展開は、まさに悲劇を超越してしまった喜劇である。

この文庫は、表紙がなんとも小説の中のあるシーンにはまっていて、格好いい。
雪にうもれた鳥の死骸は、かつて彼らが夢見たものの兆候でありながら、彼ら自身の姿でもあるように見える。
「革命」を試みた反抗者 ★★★★★
安部公房の最高傑作。

ありえない「革命」を目指した「男」と、

「彼」に巻き込まれた人々の悲哀。

ほとんど自殺行為に等しい、

「体制」への反抗を企てた「彼」は、

しかし最後まであきらめなかった。

予定された「破滅」は悲喜劇的とは云え、

やはり思いに残る皮肉な哀しみを描き出す。

或いは実現した筈の「夢」の幻である。