復讐の掟
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1972年ミュンヘンオリンピックの際、PLOによるイスラエル選手殺害に対する、モサド若手諜報部員達のPLOへの報復と彼らの悲哀と言う、史実に基づいた話です。
ここに出てくる若手エージェント達は、シャンパン・スパイと呼ばれたヴォルフガング・ロッツらの様な華やかな経歴を誇り、モサドの歴史に残る様な有名諜報員らではなく、
頭脳明晰で語学堪能、イスラエルや海外(ソルボンヌ大卒等)の有名大学卒のエリートでありながら、全くの無名諜報部員達の報復活動の話。
主人公Avnerを始め、彼らのモサドの仲間達は国家の威信を賭け、コスモポリタンよろしく、偽造パスポートと偽名を使い、
(カールはイギリスのパスポートを使い、アンドリュー・マーシィと名乗る等をし、他はドイツ人ビジネスマンになり済ます等)
イスラエルから欧州、ベイルート等中東の各国に飛び、
その間に様々な国(中東、欧州)のテロリスト・アナーキズム、コミュニスト組織やNATO等の国家組織らの諜報部員達の情報戦等も交差し、
冷戦時のソ連(現・ロシア)のKGB等が出てくるあたりは、今はもう忘れられた冷戦時の緊迫感が上手く描けていると思いました。
パリの街における車での市街戦等は、ターゲット以外の一般人に当たらないか?を心配するあたり、街の要所的な通りを仲間同士見張り合う部分等は緊迫感が出ています
最終目的として、若手モサドの工作員たちは、ターゲットであるPLOのメンバーらに報復を行います。
若手諜報部員とはいえ、当然の如く彼らは冷戦時の西側諸国(自由主義経済)で生きる若者と変わらないライフスタイルを過ごし、
(イスラエルが西側諸国と同じ生活レベルを送れる、その裏に、欧米その他に数多あるシオニストの団体の支援を土台にしているのはさて置いて)
互いに諜報活動を行いながら、仲間達と共にそれぞれの人間関係に葛藤し、その間にガールフレンドも現れ、恋愛感情も持ちながら、国家の威信を賭けて行う報復活動の合間に仲間達が死んでゆく過酷な現実や母国とは何か?に苦悩する様は読む者に緊迫感を与える事と思います。
漫画にするなら、イメージ的に「Z ツェット」の青池保子さんかな?とか、青池氏の作品は「Z」しか読んでないんだけど。
まあ、私がこの本を80年代に読んでいたら「対岸の火事」として、この本の主人公らに同情するでしょうが、イスラエル建国の歴史そのものが(イギリスが原因・まんがパレスチナ問題・山井教雄著を参照してね)現存しなかった国家と言う物を他の国の国土の上に作り上げた訳なので、
そりゃ〜もう紛争の種であるし、場所的に各宗教のメッカ(ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の重要地点)+民族問題が孕むの事で、今の日本でもこれに似た様な外国人地域が存在する事から、同情的には読めませんでした。
只、英文は比較的単純明快で、楽そうな女性向け娯楽本を読んでいた私にもとっつき易かったです。
今の日本の状況もほぼ完璧な島国だった温和な70〜80年代とは違い、ある種国家間の行き来と交通が盛んになり、その反動で不法滞在の外国人問題がある事から、他人ごととは思えず、ある種の危機感を持って読みました。
民主的なゆとり脳の日本人がこの本を読んでも分かりにくい話でしょうが、国家の威信と国益はその国の民族にとっては、命懸けなのです。
危険かつ何のメリットも無い?(尖閣諸島問題とかどうよ?)相手国家に対し忠義を誓い、子分議員を連れて某国詣でをするのは国際的視点から「日本国家を貴殿に献上します」と言ってる様な物なのです。
予算も決まらぬうちから民主党の中国詣行為は【台湾独立の観点から見ると相当背筋の凍る行為】な訳です。そして民主党は麻生時代は4回も予算決議妨害してるよね?
なのにさ、「中国詣でマッサージ受けましたぁ。(性感帯マッサージですね。わかります。)」とか言ってる馬鹿議員もいてさ、もう死んでくれって感じよ。
落合信彦の「モサド その真実」本で中東の人達が世界中が羨む程平和な国から来た日本のテロリストごっこ集団の日本赤軍を見下してたけど、ミンスも内容的には赤軍と同じ様な事やってるよね?
衝撃です
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私がこの本を読んだのは、86年くらいだったはずです。
著者は、この暗殺チームのリーダーで、この本はまさに「記録」なんです。
暗殺に関しての方法などはかなり詳しく書かれていたようでしたが、最も印象に残ったのは、著者が暗殺を遂行するにつれて、思い悩み、精神的に追い詰められていくあたりや、組織の冷徹さが浮き彫りになったところでした。
20年以上前に読んだ本なのに、その部分だけは今だに覚えているんですから、かなり強烈な印象を持ったんでしょうねえ。
信憑性の裏づけがすごい
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興味深いのはこれらの告白の信憑性を裏付けるべく、著者が実行した取材ノートである。こういう機密事項が絡む問題はデリケートで複雑だ。当然、当局が、簡単にyesというはずもない。その点を探偵のように洗っていく作業は、地道で時間のかかるものだ。告白者の証言を元に、著者はあちこちの現地に飛んで、自分の目で見て確かめていく。本文にないリアル感が取材ノートにはある。この取材ノートがあるから、本書はただの読み物に留まらず、ノン・フィクションとして心に残るのである。
読む価値あり!
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話題の映画,“ミュンヘン”の原作となった本ですが,映画を見た後この本を読むと,スピルバーグがいかに原作を生かし自分の映画を作ったかがよくわかります。また,このバージョンは昨年再発売された際にあの“アブナー”本人からの追記もあります。残念ながら新潮文庫から発売されている同所の翻訳文庫本では,同欄は未収録ですが,この原本には掲載されていない事故現場等の写真も見ることが出来ます。僕は両方買いましたが、翻訳も悪くなく,翻訳者からの追記も興味深いものでした。2つともお進めします。
「人生は小説より奇なり」
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「人生は小説より奇なり」という言葉がありますが、この本はまさにそんな感じがします。
この本の原題は「VENGEANCE」(復讐)で、ミュンヘン・オリンピックにおけるイスラエル選手・役員虐殺事件に対する報復の暗殺チームを、イスラエルがヨーロッパに派遣する話です。従って、実際の話で、そのチームを指揮した人の話を纏めたものです。
ところが、これを読んでみると、下手なスパイ小説なんかよりもうんと面白くて、一気に読んでしまいました。
映画の「ミュンヘン」もなかなか良かったのですが、こちらは又違った意味で面白いと思います。