アニー・プルーは、現代文学においてもっとも独創的ですばらしい短編小説を書いている作家だが、数多くの読者と批評家が「ブロークバック・マウンテン」をとりわけ傑作と評価している。イニス・デル・マーとジャック・ツイストは、ある夏、羊の移動牧畜の番人として、高木限界の上の放牧地で野営しながら働く。最初、人里離れたところに立てたテントをシェアしていた二人の間の友情は気楽なものだったが、やがてその夏、深い感情が二人をとらえる。二人はカウボーイらしく、仕事に精を出し、結婚し、子どもを持つ。しかし、年月が経ち、さまざまな別離を経験するうちに、二人の関係はそれぞれの人生にとってもっとも大切なものになり、それを守るためにはどんなことでもできるようになる。
「ニューヨーカー」誌は「ブロークバック・マウンテン」で「ナショナル・マガジン・アワード・フォー・フィクション」を受賞。「1998年プライズ・ストーリーズ―O・ヘンリー賞」にも選ばれた。プルーは、美しく心に響く文で、二人のカウボーイの困難で危険な関係が何物をも超えつつ、世界の暴力的な不寛容だけに阻まれるさまを描いていく。