この本は、このような様々な手法は、誰によって、どのようにして誕生したのか、(特にフィールドワークと民族誌を中枢に)その過程が描かれている。
序章で筆者の現在の文化人類学に対する見解が示されており、第1章~第10章は個々の研究者に注目し、最終章にあたる第11章では今まで挙げられてきた研究者の理論・アプローチが比較、批評されつつ、これから文化人類学者と私たちが向かうべき道筋が照らし出されている。
筆者らがこれを入門書だということを否定はしないが、個人的には、もし貴方が文化人類学に関して全くの無知であるのであれば、「いかにして文化人類学は生まれ、これから向かう先は…」的な本書を読む前に、「文化人類学とはこういうものですよ~」といった“入門書”を読む方が、この本も読みやすくなるのではないかと思う(最初から「文化人類学とはこういうものだ!」と思い込ませてしまう危険性は孕むものの)。
というのも、私はこの本を読んで、よけいに文化人類学というものがわからなくなった、という印象を受けたからだ(あとがきによれば、そこへ読者を導くことが筆者の狙いだったようだが)。
その掴み所のなさをもたらした一因は、本書は具体的な行為について事細かく述べるのではなく、概念的・抽象的な話に主眼が置かれていたからかもしれない。
読み終わった際、満足感はあった。文化人類学に興味があるのであれば、是非読んでいただきたい一冊だ。