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文化人類学20の理論

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 弘文堂
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古典再考と現状確認 ★★★★★
本書の旧バージョンともいうべき『〜15の理論』(中公新書)に比べて価格がやたらと高いのが難だが、文化人類学の歴史と現在を一挙に学ぶための本としては非常に良い論集であるので一読をおすすめする。まあ、「理論」ときくと、私などは、独創的な学者が自己の思想を鍛え上げて構築するオリジナルな体系、というイメージを抱くのだが、本書のはそういうのではなくて(「構造主義」をはじめ古典的な理論に関してはそういう感じがあるが)、むしろ個別の「研究動向」「ジャンル」みたいなのに近い。ますます細分化されつつある文化(社会)人類学の現状を考えれば、そうなるのは仕方がないのだが。
おおざっぱにいえば、まず例の悪名高い文化進化論から最近物故したギアーツの解釈人類学までの基本的な人類学史のあたりをおさえた後、ポストコロニアリズムやジェンダー論など従来型の人類学に極めて批判的な流派の見解をまとめていきながら、最近注目されている応用的・実践的な人類学の流れへと進んでいく、というような印象をうけた。特にこの学の転換点となった、サイードや「文化を書く」一派による「他者の文化を表象することは可能か?」系の反省的な議論に関しては繰り返し述べられており、少しくどいが、けれどやはり重要な論点であることを改めて実感させられた。
あと、個人的におもしろいな、と思ったのは「文化相対主義」の所である。執筆者はハースコビッツの言説を参照しながらこの理論の意義を再検討していくわけだが、これがステレオタイプな文化相対論(他文化の自律性を尊重する反面、他者を本質的に固定化してしまう)とはかなり異なっており、むしろその論は「文化のダイナミックな変化」を捉えるのに適した視座を備えていることが強調されている。本書の他の執筆者のなかにも、きわめて型どおりの「文化相対主義」を批判しながら自己の紹介している理論の利点を述べようとする者があるが、彼らこそがむしろ勝手な仮想的(理論)を頭の中で捏造し文化相対論への誤解を増幅しているのではないか、と思った。