教科書ウェブサイトにより正当から正統へ
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新機軸(教科書ウェブサイト)を携えての折紙つきの薬理学書の改版は出版界の事件でしょう。本書を購入した読者が教科書サイト(thePoint)にログインして、内容をダウンロードできることであろう。本書の検索欄でグーグルのように重要度順にスコア化され列記され、自分のコンピュータ画面に現れる。
2004年に初版が出た本書を見て、薬物療法にかかわるすべての基礎・臨床医学を統合して、論理がしっかりとしていてしかも新概念を取り入れている、切れ味の鋭い、若々しい正当な教科書が出たものと、感銘を受けていました。新たな著者が約40%と大幅に入れ替わっている一方で、医学生やMD-PhDコース学生として初版に参加していた人が成長して地位を変えて第2版の著者として残っています。
総頁数が約130頁も増加し、すべての章のはじめに症例問題が掲げられ、その章で学んだことが臨床にどのように使えるかを教えてくれます。総論を除きほとんどの章の最後に薬物名、適応症、重大あるいは高頻度の副作用、禁忌、治療上の注意点がまとめられた薬物群の表があります。あえて難をいえば、紙が薄くなったことによる頁のめくりにくさでしょうか。
化学療法に癌薬理学(情報伝達機構)が新たに設けられています。中毒学が病理学も踏まえた総論、医薬品の有害作用検出の体系的方法論、環境有害物質も含めた中毒とその治療とに分けられ、初心者も専門家にとってもそれぞれ目的の内容に到達できるようになっています。ハーバード大学の強みである全身麻酔薬理学の略語や数式の補説を含めた14章の記述はもはや古典とも言ってよく、初心から上級者まで何度でも読んで頭を整理してください。それにより原理を現場で確認し問題解決へと導いてくれることを請け負います。
この電子化された本書が真に国際化を目指す医療人とその指導者の正統的ガイドとなることを期待しています。