しかし、欧米人は、時にそれがカッコ悪い、ダサいと知りつつも、ほかになかなかいい言い方がなかったりするので、ついつい口に出してしまうようだ。「カッコ悪い、ダサい」というイメージがあるからか、こうした表現はなかなか一般の辞書に定義されていない。しかし、英語のノンネイティブスピーカーであるわれわれは、それがわからなくて困ってしまうことが多いわけで、こうした表現を「懇切丁寧に」教えてくれる辞典がやはり必要なのだ。
名翻訳家柴田元幸監訳による本書は、まさにそんな1冊だ(引用文についてはすべて原典にまで徹底的にあたっているようで、作者や作品およびその出版年の確認はもちろんのこと、発言している人物の年齢や性別あたりまできっちり割り出した上で訳しているあたりがさすがだ)。きたむらさとしのイラストも愉快この上ない。(上杉隼人)
■lock, stock and barrel:何もかも。
→イギリス映画「Lock, Stock And Two Smoking Barrels」はこれのもじりだとわかります。
■one for the road:帰る前にこれを最後にと飲む酒のこと。
→ヘップバーンの映画「いつも二人で」の原題「Two For The Road」はこれのもじりだということがわかります。
■dress to kill:最高に人目を引く服を着ていること。
→デ・パルマ監督の「殺しのドレス」の原題がこれから来ていることが分かります。
今まで見えていなかったことがこんな風にへぇという感動とともに見えてくるという体験をしました。
なお、一部誤字脱字がありますが、その正誤表には愉快なイラストと「Now We Eat Humble Pie!」(自分に完全に非があることを屈辱的な形で認めること)というクリーシェが添えられています。こういう粋な正誤表があるなら誤字脱字も許せてしまいます。