心葉くんの強さを見ました
★★★★★
美羽の自分に対する底の無い憎しみを受け止め、向き合った心葉くんの強さやプラネタリウムでの告白に涙が止まりませんでした。 竹岡美穂さんのイラストも素敵で、本当によく文章に合ったイラストをお描きになられる方だと思いました。次巻も楽しみです。
楽しめました
★★★★☆
文学少女シリーズの主人公・井上心葉
彼が「井上ミウ」のペンネームで十四歳で文学賞を受賞してからあった事。
これまでシリーズで隠されていた事が明らかになります。
心葉がずっと思いを寄せていた美羽が、何故、心葉の前を去ったか
その理由も明らかになりますが。
ただ、心葉の妙に繊細で、それでいて身勝手な態度には多少、苛立たされますね。
身勝手な想いに振り回されて、それでいて、何でそういう結論になるのだと思ったりもします。
しかし主人公はもともと繊細な少年ということですから
思春期の少年の葛藤という事で理解するべきかもしれません
あえて
★★★★☆
笑いながら人を操ったり騙したり傷つけたりするような恐ろしい狂気。しかしその根底には悲しみや恐怖、不安が、そして幸せを、愛を求める叫びがある。それがタイトルの「慟哭」なのでしょうか。
深いテーマを扱いながら一気に読める面白さの、作者のいつもながらの技量に脱帽するしかない作品でした。
と、ほめながら星を一つ減らしたのは、引っかかるものが残ったからです。
人間同士のことはともかく、無力な文鳥や金魚を殺したことはやはり自分的には許し難い思いがあります。法律的には人間に怪我をさせるよりはるかに軽い罪なのでしょうが……。耐え難い苦しみにさらされたといっても、自分よりはるかに弱く何の関係もないものを傷つけることの正当化になるとは思えません。
だからといって罪をただ糾弾しても事態が、そして登場人物たちの未来が良くなったとは思えないし、遠子の行動はやはり適切なのでしょうが、それでもやはりもやもやが残ります。
「……哀しくてたまらないときに、綺麗に笑える人よ」
★★★★★
ほのぼのした日常の描写と愛すべきキャラクターが魅力の学園小説シリーズの五作目。
ヒロイン遠子の小説への胸焼けしそうな恋濃い愛情と、それに十全な説得力を与える文字通り「本を食べる」という奇抜な設定が面白く掴まれる。
四巻までを一気に読み進んだ。
そしてこの五巻は最高傑作だと思う。これまでどこか楽観的、性善説な世界観で物語が進み、事件を起こす闇キャラにイマイチ共感できなかったのだが(むろんそれでも十分いい出来なのだけど)、この巻の美羽には見事に惹き込まれた。
テキか味方かわからない千愛や流人も実にいい味を出している。ななせも一生懸命な所がいじらしく映り、一貫した行動原理が快い。不器用だがある意味最もぶれのない心の強いキャラだ。
克服すべき葛藤が明確だから、へたれな主人公も成長出来る。「文学少女」の見せ場も相変わらずかっこいい、まさしく正義のヒーロー(?)、彼女こそカムパネルラだ。
物語を動かす「悪」に説得力がないと主人公たち肝心の「表」のキャラの葛藤も薄くなるし、読者の共感も弱まってしまう。
逆にそこさえ明確なら主題の軸はぶれない。
魅力的なキャラは過不足なく動き、「銀河鉄道」の蘊蓄も見事にストーリーと調和して、核となる心葉と美羽の愛憎と救済のドラマが眩い光を放ち、深い闇の底から厳かに浮かび上がる。
伏線も鮮やかに回収される。憎悪の裏に隠れた少女の切ない憧憬、慟哭が胸に響く。
これまでの「文学少女」シリーズには軽妙な会話に笑い、巧みな構成に感心したが、この巻では迫力ある人間ドラマに感動させられた。
ちなみに私的に次巻で一番気になるのは、遠子先輩のお受験の結果だったりする(笑)。落ちるのかな? これからは「文学浪人」かな? こうして財布の紐は静かに緩むのである。
“そういうものに 私はなりたい”
★★★★★
“謎の美少女作家”だった井上心葉(このは・♂)と、自称“本を食べちゃう程すべての物語を深く愛している「文学少女」”の天野遠子をメインに、文学作品を彷彿とさせる事件を描いた作品の第5巻です。
怪我で入院した琴吹さんを見舞いに行った心葉が、そこで美羽に再開する事で事件が始まります。
心葉と美羽とミウが中心となり、これまで謎に包まれていた心葉と美羽の過去が「銀河鉄道の夜」の様に綴られていきます。
中心は心葉と美羽の2人ですが、これまでの「〜死にたがりの道化」、「〜飢え渇く幽霊」、「〜繋がれた愚者」、「〜穢名の天使」で積み重ねられて来た物語と、心葉と登場した人達との関係があるからこその物語。
千愛、流人、ななせ、芥川、麻貴、そして心葉が、美羽が語る『雨にも負けず』、それを紡ぎ出した遠子。誰が欠けても完成しない、まさに第1巻から続くフルコースの料理の様です。
過去の終わりで未来が始まりとなる苦みばしった味。
また、独白文ではこれまで殆ど語られなかった遠子先輩について、たった一文。
次は、いよいよ遠子先輩自身の物語が綴られるのでしょうか。
最後までじっくりこの物語を味わいたいですね。