まさに戦後史、そしてこれからの生き方
★★★★★
私自身は、団塊の世代の弟分にあたる年齢ですが、自分が経験してきた戦後の風潮や政治・経済の流れをおさらいし、さらにそういう仕組みだったのかと理解することができました。グラフや表も多く、説得力がありました。
また官僚の予測が当たらない理由など、笑ってられないけれど、なるほどと思うこといくつもありました。で、その官僚の予測が団塊の世代の定年後に暗い印象を与えていますが、本書の後半では、それを払拭し、タイトル通り「黄金の十年」とするための処方箋が書かれています。
特に気に入ったのは、中学入学から大学卒業までの期間は10年であり、定年後にしっかりと目標を立てて10年勉強すれば、その分野でのセミプロにはなることができるといった話です。好きなことに向上心をもって生きるということは素晴らしいことだと思います。
団塊世代の名付け親、力まず自然体で出した秀作
★★★★☆
旧通産省出身の堺屋さん。大阪万博の企画立案に携わり「油断」「団塊の世代」の言葉を生み出した経済・社会学者である。経済学学的に言うともっぱら「内需」に強い。最近、ジンギス・ハンなど歴史ものにこっているようだが、サブプライム問題をきっかけにドル覇権の後退が進む現在、この内政的経済学は再評価に値すると思う。
著者の作品にはグローバル経済が欠如している。しかし経済の根本は「心理学」であり「行動学」なのである。団塊世代について「心理と行動」を把握しきっていると言っても過言でない。豊富な資料に基づく世代論は圧巻だ。
グローバル経済の進展は、経済の格差を生んだ。団塊ジュニアのニート化問題など悪い面ばかりではなく、著者のように価値観を変えると新しい世界が見えてくる。かつては食うに困った人がいたが、大量生産の時代で、暇で困っている人が増えているし、団塊の世代はその代表格だろう。
健康が続く限り地域のNGOで働くも由、著者のように研究励むも由、スポーツに励むも由。
団塊世代は第一の現役は引退したのだから、ここで個人個人が「知価革命」を図って、第二の現役で工夫すべきだという、著者の人間としてあくまでも前向きな姿勢に敬意を表したい。
『お荷物』ではなく、輝ける『鉱物の塊』
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30年前に『団塊の世代』で、現在までの状況を見事言い当てた著者が、これからの10年を予測する書です。
『団塊』とは著者が命名したことばで、もともとは鉱物用語。密度が高く、周囲と異なる特質を持つ、大きく固まっている存在のことです。
1947年〜1949年の3年間に生まれた人々は、約680万人。前3年の世代に比べて32%も多く、この世代を『団塊の世代』と称しています。
この世代が来年から定年を迎えます。年金負担が急増し、技能を持った人手の不足で、生産力が低下します(2007年問題と呼ばれています)。団塊の世代は社会のお荷物、との見方も出てきています。
著者は、これに対して異を唱えます。お金もあり、知識もあり、自由もある団塊の世代が、これからは消費をリードしていきます。昔と違い、60代はまだまだ元気であり、(給与の低下を受け入れることができれば)まだまだ働き続けることができ、社会に貢献できます。
もちろんそのためには、団塊の世代の方の意識改革が必要となりますが、それができれば、団塊の世代はこれから『輝ける10年』を迎えることができるとのことです。
戦後の歴史をしっかりと見据え、今後を予測した書であり、読み応えがありました。
歴史的視点からの好著
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とても読みやすい本です。「団塊の世代」の言葉を作り出した著者ならではの分析が随所に現われています。幅広い視野で、これからの10年を考える好著だと思います。
昭和の高度経済成長期を学び直すにも役立つ。
★★★★☆
「少子化」が、わが国の成長に与える影響を心配する向きが多い中で、堺屋さんは一貫して、「今の楽しみのために、お金を使える幸せ」を説いている。
この本もまた然りである。団塊の世代が創った「新しい伝統」や、「これからの高齢者市場」にエールを送る。
この本の良さは他にもある。それは、昭和の高度経済成長期を学び直すに最適という点だ。
グローバル化(=実はアメリカ水準化)をけしかけられ、自信を失って久しいわが国が立ち直るには、過去の成功例を学び直すのが近道だ。
この本で「近過去」を学び直し、同氏の名小説『平成三十年』で、「近未来」を展望すると、随分と力がつくと思う。両書ともお勧めだ。