とにかくひどい。でもいい。
褒め言葉が見当たらない、

日本初の便器ホラー……【白磁の空間】
活き作り盛り合わせ魚類ホラー……【ぴちぴち】
作者が童話と言い張る子供の日の不思議なファンタジー……【玉ノ海の想い出】

以上、三作品を収録。


【無料サンプル】
（「ぴちぴち」より）

　まだ、彼は生きていた。
　身体を生きたまま刺身包丁で裂かれ、切られ、暴れぬように竹串で貫かれ、三
枚に下ろされて、見栄えが良いように皿に盛りつけられた……鰺の活け作り。
　もはや呼吸することも叶わぬものの、それでも水中に溶ける酸素を求めて、彼は
皿の上で口をパクパクと開く。骨だけになった身体に、死は急速に襲いかかってくる。
　だが、彼はその死の瞬間にはっきりと見た。
　刻まれた彼の身体を、目の前で弄びながら白い歯で容赦なく噛み砕き、飲み込
んでしまった者……そう、人間を。
「お、まだ生きてるぞ！」
　小刻みに身体を震わせている活け鰺の背骨を、笹木はわさびを擦り込んだ割箸
で突き回した。箸に染み込んだ醤油が、背骨にこびりついていた肉にぽたりと落ちる。
　瞬間、鰺は串刺しにされた身体をくねらせた。
「いやあ、つまみは魚に限りますなあ」

（……衝撃の結末は本編で！）


【著者プロフィール】
氷原公魚

　一九七〇年六月二〇日生まれ。公魚と書いて「ワカサギ」と読む。
　キュウリウオ目キュウリウオ科の魚類の一種で、食用魚。
　北海道小樽市付近に生息。
　水質が悪い状況や低水温や塩分にもへこたれない強い適応力を持ち、天ぷらに
しても美味しい。
　電子書籍発行研究団体・竹の子書房の北海道支社勤務。
　人間以外にも肉食魚や鳥類など、多くの敵に狙われている。
　唐揚げにしても美味しい。
　著作はParadise NOVELS刊「ばにぃはんたぁ零」などの他、パソコンソフトシナリ
オライターを経て、現在とても美味しい。
　近刊「氷原公魚全集 鮪編」をKindleからリリース。