真夜中のララバイ
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「ぼくは行くところがないんです。だから、お願いします」
暗い瞳を伏せた信之が、つぶやくようにそう言って頭を垂れた。
「決まりだな。契約成立ってことだ」
思い通りに勝利を手にした俺はこみ上げてくる笑いを抑えた。
「よし。それじゃぁ、服を脱いでそこに座れよ」
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転勤で古いマンションへ引っ越した私は、押入れの奥で一冊の
ノートを見つけた。それは以前の住人が残していった日記の
ようなもので、その中にはふとしたことで同居を始めた青年との
淫乱な日常が綴られていた。
男同士の愛欲。爛れた性欲。野獣のような行為。禁断の世界。
そのすべてを詳細に記載したノートを読んだ私は、火のように
熱くなった身体をひとり慰めながら、過去の住人と青年の行末に
思いを馳せるのだった。
「色情家族」等の著者が描く超ハードBL小説。 (初出:「SM-Z」)