理屈なしで面白かったです。確かに他のピューリツッァー受賞作品に比べると、当時の政治や社会の背景の記述が少なく思われますが、そのぶん主観性と客観性、報道倫理とスクープ(利益)のギリギリのバランスをとりながら真実へと向かい、大統領をも巻き込むホワイトハウスのスキャンダルというパズルを組み立ててゆくウッドワードとバーンスタインにいつしか自分が乗り移り、あたかも自分がその場にいるような気さえしてきます。スピード感もあり、本当に一気に読み終わりました。
ノンフィクションなのですが、エンターテイメント性にも満ち溢れ、なんだか読み終わると、いちばん脂ののっていた頃のジョン・グリシャムの作品を読んだ気になります。彼の‘Perican Brief’をもう一度読みたい気持ちになりました。
要は、事実を伝えるのは当然として、その後なにを読み手に伝えるのか?ではないか。Gerald Posner(Case Close, Killing the Dreamの著者)にしろ、他のジャーナリストにしろ、ただ事実を伝えるだけではない手法をもっている。つまり、事実から何を作者は見たのか?という視点である。本書はそれを欠いているように思う。