有名な免疫学者の脳梗塞の記録だが。。
★★★☆☆
職業柄、脳梗塞の方に接する機会もあるのだが、脳梗塞になった人はこういう風に思うものなのか、と思い、前半部分は大変興味深く読ませてもらった。ただ、日本の医療制度やリハビリについては、患者から見た不満に終始しており、読んでいてあまり気分が良くない。著者も医学部を卒業し医師を妻として生きてきたのだから、医療サイドの批判をするだけで医療の改善は望めないことは分かるのではないのだろうか。コスト面を含めた具体的な方策など、建設的な意見があれば良かったと思う。
壮絶なリハビリの日々。
★★★★☆
多田先生は日本を代表する免疫学者ですが、ある日、脳梗塞に襲われ、ご自身の壮絶なリハビリの日々をつづられたのが本書です。
麻痺というのは力が入らないのではなく、力が抜けない(筋肉の収縮が解けない)状態であるというのは初めて知りました。脳梗塞は突然襲ってくるものではなく、前兆はあるようですが、それも後から考えればということで、実際の大きな梗塞が起こる前に治療を開始するのは難しいのだろうと思います。
寝たきりになってから、隣家の火事で避難するという壮絶な経験にも、冷静に対応される姿が印象的です。親などの身内が半身不随になったときにあわてないように一度読んでおく価値のある本だと思います。
いい気なもんだ
★★☆☆☆
読み終わっての感想は一言「いい気なもんだ」である.
この人のような脳梗塞の後遺症で,今現在も本当にのた打ち回るほど苦しんでいる方は,日本で何十万も居られるのだろう.声なき声が聞こえて来る気がする.でもこの多田先生は,恵まれている.家に帰るには玄関の前の数段の階段が邪魔だ.そのために,湯島天神の下に新築された2LDKの貸しマンションを借りて住み,さらには家も新築しようという財力.左手だけとはいうものの,パソコンを操り,エッセーを書いてそれを有力雑誌に掲載し,纏めて単行本として出版する,という知力と周囲の強力なる援護.これで何か文句を言うのは罰当たりではないか? しかもご本人は長年医学関係分野に携わってきたというのに,いまさらのように3時間待っての3分診療にあきれかえってみせ,一定期間以上のリハビリ打ち切りを決めた厚労省のお役人には狡猾極まりなしという悪人レッテルを貼る,という人なのである.
そもそも医療体制が不備だから3分診療になるのであり,金がないから厚労省の役人も苦労しているわけだ.誰が好き好んで,人から恨まれるようなことをするものか.国は金がないのに,老人が医者にかかりすぎるから,こういうことになる.多田先生も医療保険と介護保険を目一杯使って,保険行政を危機的状況にするのに大いに貢献しているのだが,なんらの感謝の言葉もなく,これで良いのかとの自省のかけらも感じられない.もっとリハビリを受けさせろ,の一点張り.誰がその金を払うというのか?
多くの方が,好意的な評を寄せているようなので,私のような否定的な感想は送るまいか,とも思ったが,「店長」なるレビュアーの,こんな人はゴマンといる,という感想に思わず「その通り!」と声援を送りたくなって書いてみた.
巨人についてもっと知りたかった
★★★☆☆
私の外来の患者さんが、この本を読んで、自分の中に2人の
自分が居るという変な感覚が、自分だけではないと分かり感銘を
受けたと話してくれた。そこで早速読んでみた。
「寡黙なる巨人」の正体は、正直十分に理解できたとはいえない。
あとがきに書かれた、本文より少しくだけた著者自身の思いを感じるままに
書いた部分に巨人のことが触れられているが、本文にはあまり巨人のことは
書かれていない。
この巨人とは、著者の中に脳卒中後リハビリを通して生まれてきた新しい自分
のこととあるが、その自分とどのように向き合っているのか、そのことを
もっと書いて欲しいと思った。
こうした体験が、健常者にもある自己の客観化(いわゆるセルフトーク)の
ようなものとは違い、著者のような経験をした人にしか感じられないものなのか、
また脳卒中になった人の中でも感じられる人とそうでない人がいるのか、興味が
あるところだ。
それにしても著者が受けたリハビリへの辛らつな意見は、公にするのならば
もう少し、こう改善して欲しいとか批評的に述べてもらいたいものだと感じた。
活字が苦手な方でもなんとか読破できると思います。
★★★★☆
脳疾患で倒れた著者の、直後からの生活を綴っておられます。
リハビリの現状(PT、OT、ST)について実体験を元にふれ、
またその後のご自身の状態(片麻痺)についても書かれています。
連載物をまとめた本のようで、何度か同じような内容が出てくるのと、
終盤はご自身の趣味である能についてなど書かれていて、そこは面白くなかったです。
幸い私は著者がどれほどの権威者であるかあまりよく知らないで読みました。
文中で、お金と権威があるからそういう事できるんだろうなぁって思う事はありました。
活字は全く読まない自分ですが学校の先生より紹介されたので読んだのがきっかけです。
脳梗塞の恐さ、片麻痺の大変さ、とりまく社会的環境や政治面まで知る事ができました。